アポロンが微笑んだ
連載番外編/眞緒と四季
「四季くーん、もう午前の授業も全ておわっちゃいましたよー?」
午前の授業が終わって、星詠み科の他のクラスメートたちがお昼を食べに立ち上がったり、クラスの中で机をくっつけて弁当を食べ始めている中、私は後ろの席に座っている四季くんを起こそうとしていた。
授業中で後ろから寝息が聞こえたのに、なんでか先生たちが四季くんが寝ているのを気付かない。
「私が寝ていると先生とかは直ぐに気づくくせに……」
ふてくされたようにそう呟くと、四季くんがもぞもぞと動く。どうやらやっとのお目覚めのようだ。
寝ぼけ眼でこちらを不思議そうに見る四季くんにおはよう、授業終わってお昼だよ、というと四季くんはおはよう、とだけ言い返した。
うつ伏せで寝ていたからか、額にノートか何かの跡が残っていて、苦笑した。
とりあえず前を向いて机の上に散乱している自分のものをしまおうとする。
「授業どうするの?ノート貸そっか?」
「………うん、そうする」
「わかった、後で渡しておくから!」
「…ありがとう、名前」
「いいよー、四季くんが授業中寝ているのは日常茶飯事だし!」
「………んー」
その返事は肯定なの?、と笑いながら私は自分の鞄の中に教科書やらをしまう。
中に入っている教科書は分厚いものばかりだなあ…
鞄を机に掛けてからもう一度後ろを見やる。
四季くんはうつ伏せになって………
「…ってまた寝てる!?」
さっきと同じポーズで寝ている四季くんに感心半分、呆れ半分のため息をついた。
…さっきまで寝ていたよねこの子!
すると、四季くんが寝返りをうつように微かに横を向いた。垣間見えた柔らかそうな頬をつついてみる。
「ぷにぷにだなあ……」
いや、むしろもうマシュマロみたいな肌をしているなあ。
白いしぷにぷにしてるし。
そんなことを考えている間に四季くんがまた小さく唸る。
幸せそうに眠る四季くんに横から暖かな日の光が当たる。
白い陶器のような肌が光が当たって、そして光る。
四季くんを見て、私は静かに微笑んだ。
「今日も長閑だなあ……」
すると、なぜか寝ている四季くんの腹の虫が鳴る。寝言なのか違うのか、おなかすいた、といつもの恒例の一言をぼやいた。
……四季くんは後で起こして、何か好きなものでも作ってあげようかな。
暖かな春の、とある日昼下がり。私と四季くんの共有する、大切な時間である。
(20110504)
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