「おばちゃーん、メロンパンとクリームパンとチョココロネとショートケーキくださーい!」
「あら眞緒ちゃん、また甘いもの?太るわよー?」


時間は、午後3時。つまりはおやつの時間。

私は入学して数日経ってから、すぐに仲良くなった食堂のおばちゃんにお金を渡した。


ちなみに今買ったものは私のおやつだ。
太ることに関しては………………大丈夫、多分!




05=料理仲間と遭遇?




頼んだ品物が渡されて、私は思わずにやけそうになった。


「ここのケーキと菓子パン、甘くて絶品なんですよねー!」

「あら、他のメニューは?」

「もちろんおいしいですよ!」



おばちゃんと他愛ない話をしてから、近くの椅子に腰をかける。
時間帯のせいでもあるが、人が誰一人いない。
私以外、寮に帰っているか部活に行っているかだ。




「部活、かあ……」


独り言を呟きながらメロンパンを頬張る。

そういえば私、まだ部活に入っていない。



龍之介、それに月子ちゃんは弓道部に入るみたいだけど、私は運動部に入る気なんてこれっきしもない。

やりたいことといえば、料理しかないけど、料理部とかないし、どうしようもない。



「どうしよう……」


うーん、と唸りつつメロンパンをかじる。
…甘くておいしいなあ……





「……ん?」



鼻を美味しそうな匂いが擽る。

この匂いは、絶対カレーだ。


匂いの元の食堂へと向かうと、そこには食堂のおばちゃんではなく、




「男子、生徒……?」

「ん?」



思っていたことが口に出ていたらしく、男子生徒がこちらを振り向いた。
わお、かなりのイケメンだ。



「あ、いきなりごめんなさい……」

「いえいえ、全然大丈夫ですよ」



穏やかな笑顔の、かなりな爽やかイケメンだ。
ネクタイの色は赤なので、多分同い年だ。


そのイケメンに、私はずっと抱いていた疑問をぶつけてみた。




「………あの」

「ん?」

「この食堂の調理室……って、生徒が利用するのって可能ですか?」

「ああ、おばちゃんに頼めば多分使えるんじゃないかな」

「ほ、本当!?」


やった、この調理室って使えるんだ!
いつも食堂に寄ったりしていたときに「ここの調理室使いやすそうだなあ」って思っていたから、後でおばちゃんに使いたいって頼まないと!

その場で食堂のおばちゃんがいないかきょろきょろ見回していると、今度は男子生徒が話しかけてきた。



「……料理、好きなの?」

「あ、うん!家族のために作ってたりしてたし、家で暇なときは創作料理の研究とかしていたし!」

「創作料理!へえ、レシピを作ったりしてたの?」

「うん!そっちは?」

「俺?俺も幼なじみのためによく作ったりしてたなあ。あいつらの嬉しそうな顔を見たりするのが嬉しいからな」

「へえ、優しいんだね」

「!……そんなことないよ」



男子生徒は照れくさそうに笑った。
だからか、ちょっと顔が赤くなってた。
うーん、照れてもなかなかのイケメンだ。



「私、星詠み科一年の樋口眞緒って言うの、あなたは?」

「樋口さんか。俺は天文科一年の東月錫也。よろしく」

「……すずや、って……」



男子生徒の名前、錫也で私は何日か前に月子ちゃんを自室に招いたときの会話を思い出す。

この人、月子ちゃんの幼なじみの……



「オカンみたいな男子!」

「…………」

「わっ、ごごごごめんなさい、今の嘘!」



オカンの一言に、東月くんはかなりショックを受けたみたいで、笑顔のまま固まった。
そりゃ、男子がオカンって言われれば誰でもショック受けるよね……




「………まあいいや。とにかく樋口さん、今カレーを作っているんだけどさ、食べない?」

「カレー?……食べる!」



気を取り直した東月くんはそういうと、カレーライスを少しだけよそってくれた。
ほくほくとそこから湯気が出ていて、美味しそう。


「いただきます!」

「どうぞ、召し上がれ」


東月くんのカレーライスを一口ぱくりと食べる。

少しさっぱりしていて、でもコクがある………おいしい!
黙々と食べていたら、いつの間にか食べ終わっていた。



「おいしかった!」

「そう?それはよかった」

「……この味、隠し味にバナナ入れたでしょ?」

「え、……そうだよ、よくわかったね」


東月くんはかなり吃驚したらしくて、こちらを見ていた。
創作料理とか研究してましたから、というと、なる程、と納得された。えっへん。



「いやー…東月くんと料理部とか入れればきっと楽しいだろうにー…」

「…確かに。樋口さんと料理部か、楽しそうだな。でも、この学園は料理部がないんだよな…」

「そうなんだよなー…ん?」



腕を組んで考え込みそうになったとき、天啓みたいに何かが頭の中で閃いた。
それまで座っていた席からがたりと立ち上がった。



「そうだ!」

「え?」

「料理部!東月くんと私で一緒に作ろうよ!」



そんなまさかな発言に、目の前の東月くんはショートしたかのように呆然とこちらを見た。

あれ、ダメな提案だった?




(東月くーん?おーい?)
(…………)
(返事がない、ただの屍のようだ…)





(20110501)

どうやら眞緒にはぬいぬいと同じ血が流れているみたいです。ゴーイングマイウェイ!←







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