「はあ……疲れた」

その日の帰宅後、私は自分がこれから過ごすであろう寮に着いて荷造りを終えていた。

大分部屋の片付けを終えたし、気分転換に部屋を出よてみようかな……



「もしかしたら他の女子に会えるかもしれないし……」

そう、入学式を終えてから初めて気づいたんだけど、この学園は女子が少ない、いや殆どいないんだよね…

もしかしたら、と淡い期待をうかべながら、私は恐る恐る廊下に出た。




03=隣の部屋の美人さん




「…………」

……けど、自室の周りを見回す限り女子生徒の姿が見当たらない。

そんなまさか、とは思っていたんだけど、女子生徒は私だけ……なんてことはないよね……


(ううわああああ、それだけは嫌すぎるううう!)



とりあえず自分の部屋に戻ろうともう一度ドアを開けようとしてたら、




「あの……」

「はひぃっ!?」


横から声がして思わず飛び上がった。
ああああ、今変な声が出たよおぉ……

変に思われたかもしれない、とおそるおそる横を向いた。






「あの、今年の新入生代表で挨拶をしていた方ですよね?」

「は、はい」



……そこにいたのは、スタイル抜群の美女でした。
え、なにこの子、かなり可愛い…!

ふわりと笑うその子は、赤いリボンからして、多分同い年。




「よかったぁ!女子生徒一人だけだったらどうしようって思っていたんだー!」

「え、女子生徒ってもしかして私たち二人だけ!?」



女の子は困ったように笑うと「そうみたいだね」と周りを見ながら言う。

ほぼ男子校の中に女子二人かあ……予想はしていたけど、やっぱりショックだった。
女子二人だけって、どこの乙女ゲームだよ……




「私は天文科一年の夜久月子。あなたは?」

「私は星詠み科一年の樋口眞緒。よろしく!」

「よろしくね!眞緒ちゃんって呼んでいい?私のことは月子でいいから」

「いいよー!じゃあ月子ちゃんで!」



月子ちゃんは嬉しそうにふわりと笑った。
私は心の中で「超!美人さんではないか!」と騒ぎまくっていた。



すると、今度は月子ちゃんの方から音がした。



ぐうううううぅ。





「……………」

「………月子ちゃん、もしかしてお腹すいてる?」

「…………………………う、うん…………」





月子ちゃんはそう言うとお腹の音が聞こえたのが恥ずかしかったのか赤くなって俯いてしまった。
可愛い……!とにかくこの子可愛すぎる!




「ふふ、じゃあせっかくだし、何か料理を作ろっか」

「え、でも…………」

「大丈夫!すぐに作り終わるだろうし、部屋に入りなよ!」



私はそう言うと自分の部屋に入るように月子ちゃんを促した。




*



新しい部屋の中。

自宅から持ってきたミニテーブルの前に月子ちゃんを座らせると、私は簡易キッチンに向かった。



「ちょっと待っててね!軽い夕食でも作るよ」

「え、………本当にいいの?」
「いーのいーの、おねーさんに任せなさい」



私はそう言いながらフライパンに油を敷いた。

家族に食べ盛りの男子(弟)がいたから、私は料理するのが日課となっていた。

即席で夕食やらお菓子やらを作ってきたから、こういう事態には私自身慣れていた、というのもあるのだ。



冷蔵庫の中からいくつか材料を取り出す。
卵に人参、もやしにキャベツ、それに調味料……これくらいかあれば、ちょっとしたものが作れるかな……

フライパンに刻んだ人参を入れて炒めていたら、月子ちゃんがくすりと笑った。




「ん?どうしたの?」

「あ、いや、錫也に似てるなって思って」

「?すずや?」

「あ、私の幼なじみなの」

「へー、月子ちゃんの?どんな人なの?」



月子ちゃんに背を向けながら次のキャベツともやしを入れてまた炒める。

月子ちゃんの幼なじみの錫也くんかあ。恰好いい子なのかなあと思っていたら、予想外の答えが返ってくることとなる。





「オカンみたいな人!」

「………………………え?」




オカンみたいな男子って、どんな人だよ……



*





「うーん、おいしいっ!」

「本当に?それはよかった」


月子ちゃんは即席野菜炒めと卵焼きをおいしそうに頬張りながら笑う。
いい食べっぷりだなあ…



「錫也並みにおいしいかも!」

「あはは、本当に?今度会ってみたいかも、その人に」

「うん、今度連れてくるね!」



月子ちゃんの微笑みを見ながら、私は嬉しくなった。


…こんなにおいしそうに食べてくれると作り甲斐あるなあ。

月子ちゃんはペロリと平らげると、ご馳走さまでしたと言ってからすぐに立ち上がった。




「……よし!じゃあ、私は行くね」

「うん、これからも学校でよろしくね!」

「うん、よろしくね!ご馳走さまでした!」



月子ちゃんはそう言いながら部屋を出て行く。

初めての女の子の友達ができたことが嬉しくて私は月子ちゃんが部屋を出た瞬間、思わずベットにダイブした。





(美人!美人!美人!)




(20110501)







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -