「うわ、人多いー…」


一樹兄と久しぶりに話して星月学園に入れと命れ…じゃない、お願いをされてから早くも2年も経とうとしていた。

つまり、中学三年生になっていた私は、高校受験を控えていた。



02=甘党と入学試験



親と話し合って星月学園を受験することになって。そこから目まぐるしい毎日を送ることになった。

偏差値が高い学校だから、必死に猛勉強をして。


中学3年のときに先生との二者面談で「これなら受かること間違いなしだ」と先生から言われるようにもなって。
にこにこと笑う先生の前で私は思いっきりガッツポーズをしたことを今も忘れていない。


それから日が経ち、ついに受験の日になって。私は緊張で高鳴る鼓動を落ち着かせながら指定の教室に向かって歩いていた。



周りを見渡してはみたんだけど、知り合いの姿なんて見当たるはずもなかった。

「だれか一緒にいると心強いんだけどなあ…」


ぽつりと呟いて、席を捜していると、ふと見覚えのある後ろ姿が目に入る。

短い茶色の髪に、制服は私の中学の男子制服だった。



………え、同じ中学?

あまりにも衝撃的な展開にしばらく呆然とその後ろ姿を見つめる。


もしかして、とその机の上にある受験票をそっと見る。


『宮地龍之介』

「………」



宮地龍之介。
中学の三年間、偶然にもずっと同じクラスだった、甘党仲間で作ったお菓子を分けたりしていた、多分中学の中で一番仲がいい友人。

元々口数の少ないタイプだったけど、そんなの聞いてない。




「………龍之介……?」

「…む?」



顔を上げた龍之介がゆっくりとこちらを見てから、目を大きく見開いて、なぜ、と呆然と呟いた。

いや、こっちの台詞だ!



*




「どういうことなのでしょうか龍之介氏!」

「む、どういうことってそのまんまだが…」



教室の中。
黙々と勉強をしている龍之介の前にある私の席にどかりと座って問いただしたらさも当たり前かのように返答された。

龍之介も、私と同じ星月学園を受験する、だと…?




「聞いてないよ!」

「当たり前だ、言ってないからな」


まあ確かにね、と鞄の中に入っていたマフィン(ちなみに私が休日に作ったものだ)を出してかじる。
食べる?と聞いたら龍之介は一度唸ってからすまない、と戸惑いがちに受け取ってもくもくと食べ始めた。

可愛いなあこの甘党め…!




「でも凄いね、以心伝心だね私たち!」

「なっ……」

「?」

「ば、馬鹿なことを言うな!」


そう言うと龍之介はこちらから目をそらしてしまった。(正直、何でそうしたのかは不明だ)

でも微笑ましいので、まあいいとしよう。



「……そっか、龍之介も星が好きだもんね」

「ああ、まあな」

「また一緒の高校に入れるといいね!」

「………そうだな」




龍之介の言葉を最後に、試験監督の先生が教室に入ってきたので私達は前を向いた。


後ろでいつも仏頂面な龍之介が少し嬉しそうに笑っていたなんて、気づくはずもなかった。




(さあ、入学試験のはじまりはじまり)




(20110501)







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