小さい頃から、私には何の取り柄も無かった。
テレビで見る何かの天才少年とかみたいに、何かが飛び抜けて凄い特技はなかったし、星が好きなただの平凡少女だった。
ただ、それは私からしたらとても嫌だった。
平凡じゃあ何もできない。
平凡じゃあ、きっと私はただの無力な少女なんだ。
01=会長からのお願い
でも、私には一つだけ、不思議な力があった。
人と話すとき、ぼーっとしているときに、たまに頭に何ががよぎる。それもぼんやりとではなく、割とはっきりと映像みたいに流れてくる。
先天的なものじゃなかった。
あの日までは、そんな力はなかったんだ。
そう、あの日までは。
……まぁ、その話は今は置いておこう。
とにかく、その力については、初めはなんだろうって思ったくらい。
でもだからと言って、体に何か悪影響とかはない。
だから、人には言う必要がないと思って言わなかった。
…それに言っても誰も信用してくれなさそうだし、ね。
その能力が何かを予知する力なんだと気づいたのは、それから中学に上がってからだった。
頭の中で雨が降っている映像が流れれば、その日必ず雨が降るようになった。
頭の中で自分が風邪を引く映像が流れれば、必ず風邪を引いては寝込んだ。
流れた映像の出来事が、必ず起こった変な能力。
「つまり、予知能力みたいなんだな?」
「ざっくり言っちゃえばそうなるね」
そう言って今現在、私の目の前に座っているのは私の従兄弟の不知火一樹。
通称一樹兄。
全寮制の高校の夏休み休暇で珍しく帰ってきた一樹兄は、中学のときよりも大分雰囲気が変わって柔らかくなっていた。
そのことを本人に言ってみたらそうか?と首を傾げられた。
あれ、おかしいな、結構違うと思ったんだけどな…。
「でも、一樹兄も同じような力があったんでしょ?ほら、星聞きの力だったっけ」
「星詠みの力、な」
「もうなんでもいいよ」
「よくねえよ」
一樹兄はそう言って私に軽くデコピンをしてきた。
いや、加減しているのかあまり痛くないんだけどね…
「楽しい?高校生活は」
「おう、充実しているぜ」
「それはよかった、一樹兄最近生徒会長になったって聞いて本当にびっくりしたんだから!」
「はは、悪い悪い。……そういう眞緒は?」
「え?」
「もう中3だろ、受験する高校決まってるのか?」
「う!………まだ、です」
痛いところをつかれて思わずうなだれると一樹兄は苦笑に近い顔で溜め息をついた。
悪かったな、これでも受験生なんだって!
一樹兄はしばらく考え込んだ後、何か思いついたのか「そうだ!」と言いながら両手を叩いた。
「じゃあよ、俺のいる星月学園に入れよ!」
「え!なんで!?」
「他に入るところが決まってないんだろ?星詠みの力も持っているんだし、お前にぴったりじゃねえか!」
「え、えええええぇえー!」
なんて強引な話だ!
一樹兄のいきなりの提案に慌てふためいた。そんな無理難題!
だけど、一樹兄は得意気な顔をして、自らの胸に手をおいて笑った。
…嫌な予感しかしない。
「生徒会長様直々のお願いだ!星月学園に入れ!」
(いや、それお願いじゃないから、命令だから!)
(何でもいいだろ、とにかく入れ!)
(横暴だー!)(20110501)
まさかのスタート。
私自身の従兄弟が漢字は違うけど名前が一緒だから「かず兄ちゃん」って読んでいたので、それに近い形で一樹兄、と呼ばせることにしました!
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