「ぶわっはっはっはっ、な、なんだこれ傑作……!」

「……………」


皆様こんにちは、こんばんは。誰か目の前の哉太くんを潰して下さい。



14=差し入れを届けに行きましょう



通常通りの部活。
食堂の中には、料理部部員しかいない。
錫也は調理中で、四季くんは今日は部活を休んでいる中、哉太くんは私の目の前で腹が立つほどに爆笑していた。

そんな哉太くんが手にしているのは今月の学校の新聞。
内容はといえば………まあ、だいたいは想像できるかと。



「ぶっ、見出しなんか『新設料理部部長は学園の大和撫子!?』だって、こいつ大和撫子なんておしとやかなもんじゃねえだろ!」

「……………」

「あっ、あははは!」

「……………」


この子、お仕置きをしてもいいでしょうか?

ちらりと今まで我関せずな態度をとっていた錫也に目配せをしてみたら、錫也が苦笑しながらも軽く頷いた。

よし、それでは決行だ。
私は哉太くんの耳たぶをむんずと掴んでから、


「ん、お前なにす……いててて!耳、耳がいてええ!」



思いっきり、容赦なく引っ張った。

哉太くんの制止の声も総無視して、耳たぶが赤くなるまで引っ張ってから手を離した。


あー、すっきり!




「よし、できた…………哉太大丈夫か?」

「大丈夫だよ、多分」


引っ張りすぎでテーブルに突っ伏して起き上がらない哉太くんをつついていたら、錫也がこちらを覗き込みながら笑った。

調理を終えたらしく、片手にはお弁当を持っていた。



「………何、そのお弁当」

「差し入れ。月子に持って行こうと思って」

「さ、差し入れ……!」



おお錫也、本当にお母さんみたい…!
と言おうとしたけど身の安全のために口をつぐんだ。


差し入れ、ということは弓道部に行く…ってことだよね。

月子ちゃんや龍之介にも会えるってことだよね!?



「錫也、私も行きたい!」

「うん、全然いいよ?」


錫也が微笑みながら返事をしたから、私はよっしゃ!と飛び上がった。

るんるんとスキップしながら哉太くんに声をかけておく。




「いってくるねー哉太くん!」

「……………」


……哉太くんの返事がない、まるでただの屍のようだ。




*




「錫也っていつも弓道部に差し入れしに行ってるの?」

「ああ、まあな……いつもの癖でつい」


弓道部への行き道。
私は錫也と並びながら歩いていた。


というか、差し入れって、本当にこの人男子高校生なの……?


「いやあ、流石オカン!」

…しまった言ってしまった!



「………頼むから、オカンって呼ばないでくれ……」

「じ、じゃあお母様!」

「眞緒?」

「ごめんなさい」



……どうやらオカンの前では母類の単語はタブーのようです。

それから錫也の顔色を窺いながらしばらく歩いていたら、和風な趣のある建物が見えてきた。




「お、ついたついた」

「だな。今弓の音がしないから、もしかしたら休憩中かもな」


弓道部が休憩中らしいから、木造の建物の扉の前で私は意を決して扉を開いて叫んだ。



「失礼しまーす!夜久さん及び宮地くんいらっしゃいますかー?」

「……おおおお、女子の声だあああああ!」



……叫びながら出てきたのは、月子ちゃんでも龍之介でもなく、茶髪の男の子でした。




(え、どなた…?)
(…弓道部の白鳥くんだよ)
(初めまして!!)
(は、はじめまして……)





(20110717)







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