「…………!」



料理部を結成してから大分たったある日。

郵送されてきた、という箱を寮の部屋の中で開いたら思わず息をのんだ。

綺麗に並べられたケーキ。よくよく見てみたらいつも家から通っていたうまい堂のケーキだった。



「一体誰から!?」


送り主のラベルを見てみたら、弟の名前が書かれてある。

……な、なんと…!



箱の中に入っていた手紙らしきものを読んでみる。


『寮生活で多分退屈しているだろう姉貴へ。バイト先で新作ケーキの試食をして欲しいって店長から。龍兄とかと食べたら?あと一樹兄によろしく。』



……グッジョブ弟!


12=新作ケーキと幼なじみ




ということで私は今蠍座寮の前にいます。
なんでかって龍之介と新作ケーキを食べるために!



「あ、でも男子寮に女子って入れないんだよね…」

入り口を覗き込みながらどうしようかと唸る。
見てみたところ見張りらしきものも男子生徒もいないものだしなー…



「いいや、入っちゃえ!」

ケーキ食べたさに耐えきれなくて蠍座寮に走り込んだ。

まあ、なんとかなるっしょ!




*



「規則を破るだなんて言語道断だこの馬鹿が!」

「ごめんなさい……」


なんとかなりませんでした。


走り込んでから龍之介の部屋に乗り込んだら龍之介がひどく動揺した顔で渋々私を部屋に入れてくれた。

部屋の中はきちんと整理されていた。いやあ、流石龍之介!



「流石じゃない!というか話をそらすな!」

「すみません」


そして今現在、龍之介の前で正座をして絶賛説教されています。龍之介が仁王立ちをしながら腕を組んでいる。まるで般若のようです。非常に怖い。

うんまあ、想像はしてたんだけどさあ…!



龍之介が(いつものことながら)眉間にしわを寄せながら、睨みつけてきた。



「だいたいっ、嫁入り前の女が男の部屋に入るなど!」

「(嫁入り前…)いいじゃん、幼なじみの部屋に乗り込んで何が悪いの?」

「それは…!」

「せっかく、うまい堂の新作ケーキ持ってきたのになー」



うまい堂、新作ケーキ、の言葉に龍之介の瞳が揺らぐ。
甘党仲間の龍之介がこの二つの言葉に弱いことは昔から知っている。
…ちなみにその二つの言葉は言う時にかなり強調しました。

さっきまでの威勢をなくした龍之介に更にたたみかける。



「クリームがたっぷりな新作ケーキなのになー、規則的にだめなから仕方ないかー」

「ぐっ…」

「店長と弟の自慢のケーキなのになーおいしいはずなのにー」

「……………」


おお、龍之介が理性と欲望の間で闘ってる。
耐えてる耐えてる、と内心笑いをこらえながらトドメの一言をさす。



「仕方ない、一人で部屋で食べるか…」

「…………!」

「まあいいか、じゃあ私帰るね」



部屋を出ようと立ち上がる。
お邪魔しました、と言ってドアノブを握ったら、龍之介が待て、と言う。



「………何?どうしたの?」

「………………る」

「え?」

「俺も、食べる」



顔を少し赤らめながら真っ直ぐこちらを見つめる龍之介を見て、私は笑顔になる。


やっぱり、龍之介は甘いものに弱いなあ。




(どう?美味しい?)
(む……うまい)
((可愛いなあ…なんか、母性本能を擽らせるような感じ)……あ、そうだ龍之介、今度部活に差し入れ持って行くね)
(む、感謝する。……できれば、クリームたっぷりの…)
(ケーキでしょ、わかってるよ)
(楽しみにしている)





(20110608)







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