先程の爆弾発言の後、一樹兄は私をとりあえず生徒会室にあったソファーに座らせた。
あ、なんかこのソファー気持ちいい。
一樹兄は向かい側に座ると、確認するかのように恐る恐る聞いてきた。
「……で、料理部だったな」
「うん」
「人数は?」
「今のところ4人!」
「…顧問は?」
「保険医の星月先生!」
「……部長は?」
「もちろん私だけど?」
「…………やっぱり、たちの悪い冗談とかじゃないんだな」
冗談でここまで来ないよ、と言ったら一樹兄は確かに、と呟いた。颯斗くんは横で聞きながら苦笑してる。
颯斗くんが申請の書類を持ってきますね、と言うと一樹兄はよろしくーと間延びした声で応答をする。
そして颯斗くんが去っていった後に、一樹兄は困ったような顔をしながら疲れたようにこう言った。
「お前、……とんだじゃじゃ馬娘だな」
「一樹兄に言われたくない」
(………どっちもどっちだと思いますよ………)
11=料理部結成!
しばらくして颯斗くんが紙とペンを持って帰ってきたので、それを受け取った私は必要事項を紙に書き始めた。
一樹兄が前から覗きながらふむふむと頷いている。
「お、四季も部員になったのか?」
「そだよー」
「あの四季が料理部か…」
そういえば生徒会室に送り出される時に四季くんに「オヤジによろしく」って言われていた記憶がある…
オヤジって、一樹兄のこと…だよね……
お、オヤジって……一樹兄にぴったりだ……!
「?……おい眞緒、何笑っているんだよ?」
「なんでもないよ、オヤジ」
「オヤジ!?」
笑いを堪えながらそういうと一樹兄に拳骨を一発食らった。あいたたた…
一樹兄はそんな私を無視して続きを書くのを促した。
仕方なくペンをまた握る。
「顧問が星月先生って…」
「前代未聞だよね!」
「自分で言うか?普通?」
いやまあ、でも自分でもかなり驚いたからなあ…
まさか保険医が顧問だなんてないことだよなあ…
「………で、部長がお前で、副部長は……錫也か」
「?一樹兄、錫也と知り合いなの?」
「まあな」
「………ふーん」
意外な事実に顔を上げると一樹兄が微妙な顔をして顔を逸らした。あんまり触れてほしい話題じゃないらしい。
知らぬが仏、ということで書類を黙々と書いて、書き終わったそれを一樹兄に渡した。
一樹兄は書類にさっと目を通すと(これが意外に早い!)、こちらを見て笑顔になった。
「よしっ、確かに受け取った。来週から部活始めていいぞ!」
「……え、独断?」
「ああ、まあそうだな」
「…………」
だ、大丈夫なの…?
もっとこう、先生たちと相談するとかしないの!?
不安になって颯斗くんに視線を送ってみたら、困ったような笑顔をしていた。どうやらいつものことらしい。
…このマイペースめ!
*
「…………と、言うわけで来週から部活始まりまーす」
「おー」
その後。
生徒会室から出て行った私は直行で食堂に向かったら、三人が一つのテーブルを囲んで座っていた。
そのテーブルの上にはホットケーキが乗っていて、みんなで黙々と食べていたらしい。
いや、さっきもマフィン食べていたよね!?
そう言ってみたら、四季くんがさも当たり前かのようにさらりと言い放った。
「…おなか、すいたから」
「……そうですか」
なんか脱力感がしたのは私だけでしょうか?
気を取り直して私は説明を再開した。
いかん、このゆったりペースに飲み込まれそうになった…
「活動日は週1日、だいたいは月曜にしようと思っています。余裕があればもう一日ついかしようと思うんだけど」
「おおー、本格的」
「そりゃまあ、始めたからにはしっかりやらないと」
哉太くんはまあな、と呟いてからホットケーキを頬張る。
ああ、おなか空いてきた……じゃなくて。
「基本、活動内容は食堂を借りて創作料理、それとその試食ってところかな」
「そうだな、もっとも哉太と神楽坂くんは試食専門になるかもしれないけどね」
「そうだね……っと、もうこんな時間!」
相槌をしながらちらりと時計を見ると日も暮れそうな時間帯だった。
錫也もそれを見てまずいな、と言う。
確かに大分遅いからそろそろ食堂から出て行かなくては、と思いながら手をぱんと叩いた。
「じゃあ、来週からよろしく!今日はもう解散!……する前に」
「?なんだよ?」
「残ったホットケーキ食べさせろ」
それと同時にお腹がぐうと鳴った。そんな私を見てその場にいた全員が爆笑し始めた。
…あ、四季くんは微笑んでいたけど。
(ぶっ……お前、ずっと我慢していたのか?)
(ソンナコトナイヨー)
(棒よみ……)
(四季くんうるさい)
(はははっ、早く食べないと夕飯の時間になるぞ?)
(はっ、そうだね!(パクパク))
(こいつ、食べるの早過ぎる、ひー腹痛い…!)
(20110525)
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