俺が、清花にできること。
一体、何ができるのだろうか。
「うーん……」
「会長、悩んでいる暇があったら仕事して下さい」
生徒会室でうんうん唸っていたら、颯斗が眉間にしわを寄せながらこちらを睨みつけてきた。
悪い、と謝りながら机の上に積み上がっている書類に手をつける。
本来なら「ぬいぬい、オヤジくさいため息ついてるー」とからかってきそうな翼も、黙々と作業をしていた月子も心配そうにこちらを見ていた。
すると、月子が遠慮がちに口を開いた。
「あの、一樹会長……どうかしたんですか?」
「………いや、まあ」
何かを言おうとしても、言葉に詰まってその、とかまあ、とか煮え切らない返事しかできなかった。
目を丸くした颯斗が、意外そうに呟いた。
「珍しいですね、会長が悩み事だなんて」
「まあ、な」
「あのっ、私たちでよければ相談に乗りますよ!」
月子がガッツポーズをしながら微笑む。
翼もいじくっていた発明品を持ちながらこちらに体を乗り出した。
「そうだぞー!ぬいぬいが考えに耽ってるだなんて変だ」
「何だと!」
「会長は僕たちを頼らなさすぎなんです」
颯斗の一言に、俺は何も返せなくて唸った。ぐう。
期待を込めたように見つめてくる三人。
……俺を信頼し、そして俺自身も信頼している三人。
……話してみるか。
身を乗り出す月子に翼、その後ろでじっとこちらを見つめてくる颯斗に、俺は全てを吐き出した。
*
「………これって……」
「俺からの見舞いだ!」
その次の日、俺は清花の病室にいた。
全てを相談した後、三人は顔を見合わせると同時に噴き出した。
なんだ!と苛立たしげに怒鳴ったら、月子が悪戯っ子のようにくすりと笑う。
女の子は、アクセサリーとか貰えたら嬉しいですね。
クスクスと笑う月子の前で、俺は唖然とした。
あ、アクセサリー……?
思わず聞き返したら、颯斗がとりあえず渡してみたらどうですか、と微笑みながら言ったので、そうだな、と言った。
清花は見えないはずの手元を見ながら、大きく目を見開いている。
「ネックレス…?」
「お前に似合うかと思ってな。なんなら付けてやろうか?」
「………いや、少し待って」
清花はそういうとネックレスを両手で包み込んだ。
そして、それを大切そうに、本当に大切そうに、抱きしめるかのように抱える。
そして、清花は顔をあげると優しい微笑みを浮かべた。
一瞬、心臓が強く跳ねあがった。
「ありがとう、一樹」
「………お、おう、気に入ってもらえてよかった」
「?」
変などもりかたをしたことに対して清花が首を傾げていたが、そんなことはどうでもよかった。
………なぜ、俺は。
(こいつを抱きしめたいと、思ってしまったんだろうか)
(20110711)
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