「かーずきー!」

「うおっ!」


平穏なある日、生徒会室で俺は背後から何者かに思いっきり抱きつかれた。
いやまあ、誰だかは検討着くんだけど。





「……清花、後ろから抱きつくなって何度言ったら分かるんだ!」

「うん、ざっと百億回くらいか」

「ったく……」




この子供っぽいこいつ、清花は西洋占星術科の三年生で、俺の友人だ。

この学園には女子が二人いて、ひとりがうちの生徒会書記を勤めている夜久月子で、もうひとりがこいつだ。

だけど、こいつは女の子らしさの欠片もなくて、本当に女なのか?と何度も疑問に思ったことがある。
にこにこと笑うこいつを見て、深い溜め息をつく。




「まあいいや、ところで清花」

「んー?」

「お前、暇なら生徒会の買い出し行ってくれないか」

「え、暇だなんて一言も言ってないじゃない!」

「暇じゃなかったら今頃ここにはいないよな?」

「ぐ」



しまったとばかりに清花は押し黙る。俺はにやりと笑うと紙を清花に渡した。

もうこれでこいつは反論できまい。





「どこへ何を買いに行くのか、その紙に書いてあるからな」

「……わかったよ」


清花は渋々と紙を受け取ると、ゆっくりと立ち上がる。
そのまま生徒会室を出ようとしたら、今度はいきなりばっ、と振り向いた。

いきなりなんなんだ。





「帰ったら、絶対アイス奢ってよね!」

「はあ!?」


反論しようとしたらあいつは逃げるように走り去った。
言い逃げって、餓鬼か。




「………仕方ない」

財布の中を確認する。
よし、お金はあるな。



俺は生徒会室の自分の椅子に座って待つことにする。
内心、買い物袋を持ってアイスー!と嬉しそうに帰ってくるであろうあいつを見るのを楽しみにしながら。







一時間後、帰ってきたのはあいつじゃなくて病院からの電話だった。







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やっちゃいました切ないぬいぬい中編。
あああ、文才をください…





(2011)







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