to exsist is to be perceived | ナノ



8回目に彼に会ったのも、どうやら夢の中だった。戦国時代で彼に首を絞められた私の目の前が真っ暗になり再び光が射すとそこは私の家だった。先程と違うのは私が第三者の視点にあるということ、則ち私の目の前には三成くんと私がいるということ。三成くんはいつも着ている服を着ていた。

「貴様、また私を裏切るのか…?」

「裏切るって何よ!私は三成の恋人でもなんでもないじゃない!それに第一、徳川先輩は関係無い!」

この光景はまるで私が体験したかのように回想されているのに私にこんな過去は無い、筈だ。私が彼に会ったのはあの花屋の下が初めてでその彼もしかも幽霊で、こんな風に過去に彼と言い争った事もない。そして私が最後に叫んだ、徳川先輩は関係無い、という言葉。また徳川。先程の夢でも、私の嫁ぎ先は徳川、私は彼を裏切っ…

「あの時の約束を忘れたのか、名前!!」

名前、と彼が私の名を呼んだ時背筋が凍るような感覚を覚えた。彼は目の前にいる"私"に向かって叫んだ筈なのにまるでその言葉はこの夢を見ている私に言われているようだった。あの時の約束、とはつまり先ほどの夢で見た遥か昔の彼との約束、次の世では共に生きたいという彼の願い。彼はそれを、覚えていたんだ。だからその約束を果たそうと私に、

そこで私は全身がどこか違う世界に持っていかれてしまうような圧迫感と目眩と吐き気を覚えた。目の前では相変わらず三成くんと"私"が喧嘩をしている。嫌気が刺した私が自宅を飛び出し階段を駆け降りたところで、前から猛スピードで突っ込んでくる車が目に入った。間に合わない、私は、死ぬ

あれ、?でも私は今生きているのに

キキィッと物凄いブレーキの音と共にドン、と鈍く何かとぶつかる音がした。思わず目を瞑ってしまった私が目を開くとそこには"私"を庇うように覆い被さり血だらけで倒れ込む、三成くんがいた


「い、いやあああああ!!!」


これは夢じゃ無い
全て本当に私が体験した事だ

また激しく目眩と吐き気が私の体を襲い、次に目をあけた時には現実に戻っていた。全て思い出した、全て。私は鞄を手に取り時間も気にせず家を飛び出した


ああ、そうか
記憶喪失なのは私だったんだ