指輪 | ナノ
 

はなむけ
 

「おめでとう!」
「おめでとう御座います」

華やかな会場幸せそうな来客者、淡い藤色のパーティドレスを身に纏った私は居合わせた真田くんと共に深く頭を下げた。受付を済ませ会場へ一歩赴けば名字名前様と名前の書かれた席は簡単に見つける事が出来た。私の席は意外にもテニス部のメンバーの集まる席と共にあり、ただならぬ柳の配慮だという事が直ぐに分かった。今日この場に来ることになっている来客の内私の知り合いと言えばそのテニス部くらいなものだったからだ。真田の近況を聞きながら相づちを打っている内に、仁王くん、丸井くん、切原くん、柳生くんにジャッカルくんが続々と似合いすぎる程のスーツを着込んで登場した。

こうして揃うのは久方ぶりだと溢す真田くんに、私が共にこの場にいることに対して謝罪しようとしたところ、直ぐ様柳生くんにフォローを入れられた。私の言いたい事が分かるなんてまるで、と思ったところでそんな事はお見通しだったようだ。柳なら必ず名前も欠かせない存在だと言う筈ですから、なんて言われてしまった。幸村くんはまだ来ていない。

「それでは、新郎新婦の入場です!」

昔一度顔を合わせた事のある柳の会社の同僚さんの声で、音楽が鳴り始めた。ゆっくり開いたドアから入場してくるのは、かわいくドレスアップしたどこかの国のお姫様顔負けの女性と、

「柳…」


柳は今日、結婚する。



二人の幸せな様子に目を奪われている間に終わってしまった披露宴も一段落し、いつの間にか輪に合流した幸村くんに目をやると彼も他の人達と同じようにスーツを身に纏っていた。正直今私の近くにいる人たちは皆ずば抜けてスーツが似合う所謂いけめんという奴だしスタイルも良い。このまま2次会に行こうと会場の予約の電話を入れる丸井くんが人数を数える時7と言っているのを聞いて、そこに私も入っているのだということになんとなく安心感を覚えた。どうやら柳も後から来るらしかったのだが何時頃になるか分からないということで、一旦は保留になったらしい。

「名字さん」
「幸村くん」
「今、どんな気分?」

意地の悪い彼はくすくすとその表情を緩ませながら私のすぐとなりにやって来た。ちゃんと話すのは本日初めてで、しかも会うのも半年ぶりだった。どうやら彼も仕事で海外を駆け回っているらしいということは先月偶然居合わせた真田くんから聞いていたのでこちらから特に連絡を取ることも、ましてや幸村くんから連絡が来ることも無かった。少し伸びた髪の毛のせいでぐんと色っぽく大人びた幸村くんの隣に立つのはなんだか申し訳ないような気がしてならない。

私の薬指に嵌まった“呪縛“に目を向けると、更におかしそうに目を細めた。

「最高にめでたい、ってところかな?」



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