謳歌 | ナノ

「頭痛い」
「ならば保健室に」
「真田さ、もう飽きてきたでしょ?いい加減その下り飽きてきたよね?やめていいよ?てかやめて」

昼休み、同じクラスになった中学以来の友達である裕香ちゃんと和気あいあいお弁当を広げていたら物凄い形相の真田がまだ昼休みも半分過ぎていないくらいの時間に帰ってきた。私の言葉を華麗にスルーし裕香ちゃんが座っているのを見た真田は裕香ちゃんの席にいるから終わったら呼べなんて一言残しそれっきり窓側の席に着席し窓の外を向いてしまった。実は女子テニス部部長をしている裕香ちゃん(昨日その事実を知った)も苦笑いする理由を私は知らない。どうしたものかと聞いてみると何故かクラス内を見回してから私の耳へと顔を寄せてきた

「雨宮さん、テニス部のマネージャーやりたいんだって」
「マネージャー?あと半年も残ってないのに?凄い情熱見習いたい、と言いたい。てか雨宮さん誰さん?」
「転校生!うちのクラスに来たじゃんかー」
「ああ、あのかわいこちゃん」

教室にいないのを見るにどこか違うところでご飯を食べているのであろう。転校生の雨宮?さんはどうやらあまり私達A組の女子と仲良くする気が無いらしく、自己紹介が終わった後隣の席が幸運にも女の子だったにも関わらずそれを華麗にスルーし反対側の真田に色々聞いていた。最初から真田に向かっていく()なんて相当な勇者なのだなと感心していたのだがしかしどうやらそういう事でも無いらしい。うちのクラスは何故か女子が8人しかいない。故に女子同士の仲は今のところ悪くは無いというかむしろとても良い。そして皆尋常じゃ無いくらい優しいので転校生の子にも色々教えてあげようとしたのだけれど悉く断られてしまったのだ。そんな私も廊下で迷ってしまったのかきょろきょろしていた彼女に声を掛けたら無視されてしまったのでこれ以上どうすることも出来ない。無視されるなんて予想外過ぎて溜め息しか出なかったな、なんて回想しているとまた裕香ちゃんの声が降ってきた

「しかもなんか、すっごい媚媚っぽいらしくてリサが困ってるって」
「そんなあからさまなの?」
「初日なのにうちの男テニレギュラーの名前全部言い当てたらしいよ!あたしもそれリサから聞いて超びっくりしたもん」
「いやそれただのストーカーなのでは?」
「あの変人集団男テニにストーカーなんていると思う?」
「顔だけ見たらイケメンじゃん?」

それを言うと裕香ちゃんは確かに、なんて勝手に納得したまま黙り込んでしまった。しかしまあなんとも面倒なひとが転校してきたものだなと感心してしまう。第一彼女の転校から不思議というか変な事が起きすぎている。とりあえずこのクラス編成は有り得ないとしてもあの変人集団と呼ばれるテニス部にそんなに近付きたがるなんていうのが恐ろしい。確かに見た目は良いしテニスに関する才能もあるのかもしれないが裕香ちゃんの言うようにがっつきすぎているのがどうも、目に余る。今時そんなあからさまな人もいるんだなーと真田にちらりと目をやると彼には珍しく机に突っ伏して規則正しく肩を揺らしていた。

「でもさ、あんまりそういう事してると噂になるよねー」
「まあ確かに。しかも転校生でしょ?実佳達に目つけられなきゃいいけどねー」
「時間の問題なんじゃない?」
「でもテニス部がいいって言うならいいんじゃないの?知らないけど」

そんな事よりもストーカー、といえば柳蓮二はその転校生の事について調べてくれているのだろうか。途中経過が気になった私はそのうち聞きに行こうかと丁度予鈴の鳴ったスピーカーに目をやりながら考えた。今日も私の周りはとってもとっても平和である
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