謳歌 | ナノ

春、それは新しい出会いの季節。未だにそれを信じて疑う余地の無い私は春休み開け最初の登校日をいつも心待ちにしている。どんな子がクラスにいるのだろうどんな先生になるのだろう、私は一体どんな学校生活を送るのだろう。去年の時点で大学への通過がほぼ確定になった私は勉強をそこそこやっていれば特に問題は無いらしい。故にこんなに意気揚々と登校する事が出来るのだけれど。今年の私は登校早々望みや希望といった生きて行くための糧をごっそりがっつり抉り取られてしまった

「え、うちのクラス文系で間違い無いよね?そうだよね?」
「名字!ドアの前で立ち止まるな通行妨害だ!」
「後ろから煩い真田こっちはそれどころじゃないから大ハプニング発生につき3年生終了のお知らせだってこれはまじで」

おかしい。おかしすぎる。なんなんだこの野郎の数は。理系クラスである後半のクラスで女子が少ないという話はよく聞く話なのだが文系でこれだけ酷いが出る時は大抵が女子の方が多いという結果になっていた。それは私も同じで確かに去年私のクラスは女子の方が圧倒的に多かった。それなのに今年は突然、どんな気分転換を図ったんだ大事な時期だと言うことが分からないのかと脳内抗議を繰り広げるも当たり前のように見知らぬ男子生徒達が次々とクラスに入ってきた。それを見ても信じられないとクラス前に掲示された座席表を隈無く見やる。そして私は再びひとの迷惑を考える事無く絶叫することになった

「え、これ離任式に見たのとちが…「やはり貴女もそう思いますか」

後ろからにゅっという効果音響かせんとばかりに現れた柳生に驚きを隠せずにいる私をそのままに座席表をじいと眺める柳生。やはりという言葉を発するところを見るにどうやら柳生も私と同じ違和感を覚えているらしい。クラスに並べられた机とそこに座る男子生徒を座席表と見比べてはふむ、とわざとらしく顎に手を置いている。探偵気取りご苦労様と軽く頭を下げとりあえず教室にある自分の席を探すと幸か不幸か隣の席はもう何度目かも分からない真田だった。周りの事なんて気にしないのかどうでもいいだけなのか一心に分厚い本を読んでいる。そういえば去年、真田の誕生日にエロ本とありったけのゴムを送ったら本気で怒られたんだったなんて事を今更思い出して少し笑ったら私に気付いたのか真田がちらりとこちらを見た。まあそのコンドームはその時彼女が出来たとか話題になったのを聞いて使えよって事だったんだけれど、その後少しして結局あげたゴムをひとつも使わずに別れてしまったらしいからとっても面白い。…いや申し訳ない。

「名字、またお前が隣か。知らない奴よりは幾分良いが授業中騒いだら容赦せんからな」
「おーこわ。てかてか真田、このクラスさ、変だと思わない?」
「変?お前と俺が高確率で隣の席になる事がか?」
「それもとっても私としては気になるんだけどね、それはとりあえず置いとこうよ真田話を面倒臭く掻き回さないでくれると泣いて喜ぶ」
「名字、悲しい事があるのならば…」
「もうお願い一回死んできて」

駄目だ、全然話にならない。真田は頭が良い筈なのにこの展開は一体なんだ?わざわざ言葉を選んで話していたのについに口走ってしまった言葉を聞いた真田に思いきり頭を殴られた。横暴だ、これは独裁だと勝手に思いながら先ほどまで教室前にいた柳生の姿を探すと、私らとは反対側、つまり窓側に着席し何やら携帯電話で誰かに連絡を取っていた。誰ならこの違和感を分かってくれるだろうかとチャイムを聞きながらぼーっと考えた。新しい担任の先生らしき人が入り今学期最初のホームルームを聞き流していた私がふと、ある人物が頭に浮かんだのは先生が何やら人の名前を呼んだと同時に入ってきたクラスに見たこともない女子生徒が転校生だと紹介された時だった。柳、蓮二。あの時聞いた名前を小さく口にした次の瞬間、転校生の女の子と目があったような気がした。少し変わった雰囲気を持つ可愛い転校生の女の子にも、何故か変な違和感を感じた私はホームルーム終了と同時に教室を飛び出し全てのクラスに貼ってある座席表から柳蓮二の名前を探すことにした
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