謳歌 | ナノ

「え、なんで部室からアイドルが?」
「アァン?なんだ、そりゃ」
「え、だって貴方崇拝というかそういうのの対象なんですよね?アイドルってそういう神的なものを崇める時に使うんですよね?学校の子達がそう呼んでましたよ、それにサニーズ顔負けの容姿だしあ、もしかして実はサニーズ?」
「な、なにを言ってんだ、お前…」
「なんや、跡部が言葉に詰まるなんて珍しい事もあるもんやな」

なんかゾロゾロと出てきた

コソコソと丸井の後ろに隠れ、出てきた見知らぬ集団、というか今日の練習試合の対戦校である氷帝の面々を間近で拝むとやはりあれだけの女子生徒が来るのが分からんでもない。出てくるひとりひとりがジャンルの違うイケメン、イケメン、イケメン。こんな近くにイケメンがこんだけいたら確かにサニーズとかいうアイドルなんて興味関心の対象外になってしまうのも無理は無いだろう。まじまじとその中心人物であるアトベさんを見ているとばっちり目があってしまった。もうお願い帰らせて。というか部室からなぜ氷帝学園の皆さんが?

「お前ら今日こんなきらびやかな集団と試合してたのかよっ丸井っ」
「は?きらびやかってなんだよっ」
「光ってる!輝いてるよオーラが違うよお前ら勝てねえよこいつらに!そもそもの容姿スペックがちが…っ」
「名字さん、今なんて?」

こそこそと丸井に文句、という名の感想を述べていたら何か凍てつくような言葉という名の太い棘が私の心臓を抉った。別に心臓はどこへもいっていないのに丸々抉り取られ抜き去られた気分にさせる相手は立海の部長さん。どうして貴方も私の名前を知っているの?という丸井に対して使った問いはもう使わない。どうせ柳かリサが喋ったに違いないからだ。どうやら彼には人を射殺せる力がオプションとして備わっているらしい。これは全国常連当たり前だ容姿とかそういう問題じゃなくて彼ならやれると私は確信した。しかしそういえばまだ私は部長さんの名前を知らない。確か幸なんとかだったと思ったけれど、やはりクラスも違えば話す機会も無い。運動部でさえない私はその部長さんに一瞬の興味を抱く瞬間も無かった。何度も言うが、変人集団テニス部は本当に真田と柳生でお腹いっぱいで、他の奴がどうであろうが知った事じゃなかった。しかし私にも礼儀というものはある。名前を知らないまま話をしようなんて失礼な真似はこれ以上続けられないと勇気を出して聞いてみたら部長さん始め、2年のワカメくんもその後ろで柳生と何やら話していた銀髪も、そして一番は氷帝の皆さんが目を大きく見開いた。私に何も教えてくれなかった真田と柳生には気まずそうに目を逸らされた

「名字さん、俺の事知らないの?」
「存在だけなら知ってましたよ、真田よりやばいっていうからどんなじじいが来るのかと思いきやこんな人間らしい容姿でびっくりしましたけど」
「なんだ、幸村こいつマネージャーじゃねえのか?」
「いやいや恐れ多い…わたくしなんてただの一般生徒です。てか部長さん幸村くんと仰るんですね」
「うん、二度と忘れないでね?」

あはは、と適当な笑みを返し思いきり柳生と真田を睨み付けるとあからさまにまた目を逸らされた。二度と忘れない、きっと幸村という名前は二度と忘れないだろうと背筋が凍っていくのを感じながらふと私は疑問を抱いた。そもそも何故私は今こんなに絡まれているのか。これもそれもどれも全て私を待たせている柳のせいだ。あいつがこんなことをしなければ今ごろこんな目に会う事も無かったのに。会ったら一度ぶんなぐってやろう。そう心に言い聞かせながら全体的にきらきらした集団の中で私だけがドスいオーラを放ち柳の登場を待った。待っている間に思った事なのだが氷帝学園の皆さんは所謂育ちというものが違うらしい。いや立海のテニス部もだいぶ違うと噂になった事はあったけれども。なんというかそういう次元じゃ無い雰囲気がふつふつと漂ってくるのだ。主に庶民の私に。立海だって一応は私立だし名門と言われている学校であることに間違いは無い。しかしうちの学校は決して金持ちだけが集まる学校ではない。私のように当たり前に普通の家庭の学生もいる。故に氷帝学園の皆さんの風格は非常に、違和感がある。東京は怖いところだと頷いているとアトベさんに睨まれたが気にしない。むしろそんな事よりも端の方でまだ帰らないのかみたいな顔でアトベさんを睨んでいるキノコみたいな髪型の学生の方が目についたがまあそんな事はどうでもいい。きっと二度と会う事もないのだろうしとりあえず出てこない柳の行方にいのいよイライラし始めた私は気晴らしに目の前にいた真田の背中を思いきりぶったたいた

「名字!!!」
「あ、すまないすまない手が真田を叩きたいと言って聞かなかったんだよ許しておくれハニー」
「は、はにっ…「あー真田面倒くせえーてか柳まだ?」

溜め息混じりに真田を睨み返すと何故かワカメ頭の2年がおお、と小さく歓声を上げていた。そこで感心されてもちっとも嬉しくないのでもう一睨み、真田にがんを飛ばしたところでガチャリと、氷帝の皆さんが登場したドアの隣の部屋から人が出てきた。これは私彼らの部室を勘違いしていたパターンだてへぺろとここまで真顔で考えたが次の瞬間私の表情は一変する事になる

「えへへ、やな…蓮二くんありがとう」

うちのクラスの転校生かつ新マネージャー雨宮さんと柳が腕を組んで部室から出てきたせいだ。私の表情の変化?勿論、爆 笑
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