謳歌 | ナノ

全然楽しくない。今日は本来ならば楽しい楽しい週末の筈。朝からぐだぐだテレビを見ながらお菓子を食べて、詰んでいたゲームの続きをしながら一日を終える予定だったのに何故今私は見たかったドラマの再放送をちらちら見ながら制服に着替えているのだろう。お陰で全然ドラマの内容が頭に入ってこない。母親に時間だとどやされ慌てて家を出る12時。昼御飯を食べる時間も無い私を考慮してくれた母親の買ってくれたパンを鞄に突っ込み私は学校に向かった。今日は我らが立海大附属の男女テニス部の練習試合が本校で開催される。部活の練習試合って大会でもないのに見に行く価値があるのか?なんて失礼な事ばかり考えていた昨日の夜。20時ぴったり、私が楽しみにしていたバラエティ番組終了直後に響いた着信音に私はもう驚く事もしなかった。間違い無く狙って送信されたであろうメールを開くとそこには知らないアドレスからの未読メールが一件。題名に律儀に添えられた柳の名前を潰してやりたくなる気持ちを抑えてとりあえずアドレスを登録、本文に記載されていたのは本来テニス部員に送られるであろう連絡事項のような文脈の文字達。しかしどう足掻いたところで逃げられないと判断した私は嫌々最寄りの駅から学校へと足を向けた

「何、あの可愛い制服」

そして辿り着いた学校の校門を潜ったところで私はその異変に気がついた。見たことの無い制服を身に纏った生徒達が大群で校舎前に群がっているのである。しかもうちのださーい制服なんか比にもならないくらいの上品で着心地の良さそうなブレザーとスカートを着て。プリーツとかうちの制服の何倍?そんな事よりもこれが一体何事なのかととりあえず驚きのあまり耳から落ちてしまったイヤホンをつけ直し柳に指定された場所を探して敷地内を徘徊することにした。広いだけがとりえのうちの学校は使う理由が無ければ踏み入らない校舎や敷地が沢山ある。運動なんて面倒な事はやらない主義の私がバカ広い校庭のどこにテニスコートがあるかなんて知る由も無く先々で見かける可愛い他校の制服を押し退けながら目的地を目指した。帰っていいかな、とは言えない

「名字じゃねえか、こんなとこで何してんだよぃ」
「あ!ブタくん!いいところに!」
「俺はブタじゃなくてブン太だ!!」
「冗談に決まってるだろう丸井くん。ところでテニスコート知らない?柳にテニスコート来いって脅されてんだよね」
「なんだ試合見に来たのか、お前も暇なんだな」
「うっせーなはったおすぞ。私は暇じゃないんだけどね、柳に脅されてまして」
「本当に嫌なら来なきゃ良かっただろぃ?」

はっ、と思わず私は目を見開いてしまった。そうだ確かに、本当に心から嫌ならサボるなりばっくれるなりすれば良かったのだ。それなのに律儀に早起きまでして時間にも余裕を持って登校してしまうなんて私はとことん柳の超能力の餌食になっているらしい。まあばっくれた後無事でいられる保証も無いわけなのでとりあえず顔だけでも出して帰れば良いだろう。というわけで再び私の目の前で豪快に笑うまるまるとしたブタくん…丸井ブン太くんの頭をぶったたきコートまで案内させる事にした。相変わらず目につく可愛らしい制服を睨むように見ていた私に優しいブタくんはそれが今日対戦する相手校の制服だという事を教えてくれた。ヒョウテイ学園、なんて一体どんな獰猛な学校なんだろう。なんてったって豹だ、豹。強そうだねと前を歩く丸井に言うとなかなかやるんだぜあいつら、なんて言うものだから豹が獲物に向かって突進する姿を想像してしまった。勿論突進先は真田で
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