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結局速水の好みなのだから仕方ないか、と決着をつけると、陽は歩き出す。その後ろを、なんだか気まずげに速水が着いてきた。

「ちゃき」
「なーに」
「ごめん」
「いいよ」

素直に謝ってくる速水に、陽は笑みを返す。別に謝罪などいらないのに、変なところで真面目な男である。
そこがまた面白いのだが。


その日陽は市販のタルタルソースを買った。他にもたくさん買い込んだので、それを二つのエコバッグに詰めていく。いつも重い方を速水が持ってくれるので今日もそれに甘えて、それぞれ荷物を片手に持つと、二人は空いた手をどちらからともなく繋いだ。

「あ、」
「なに」
「ラップ買うの忘れた」
「明日でいいだろ」

そんな会話をしながら、寮までの道を歩く。普段速足の速水はゆっくりと歩いて、陽に合わせているのが端から見ても分かる。何気ない話題に二人は笑ったり怒ったり、なんだか忙しそうだ。

「あ、先輩頭に葉っぱ乗った」

ふと、風に揺られた小さな葉が速水の頭に着地した。速水は「うそ、とって」と立ち止まり、陽に向けて屈んで頭を見やすくするために顔をうつ向かせる。

「とれたよ」
「うん」

すぐに葉を取り除いた陽に、速水はうつ向いていた顔を上げた。そして、腰を上げる動作をしながら、陽の首の後ろに手を回す。

「さんきゅ」

ちゅ、と軽く音を立てて陽の唇にキスをして、速水は完全に立ち上がった。陽の顔が途端に真っ赤になる。

「……ヒロ先輩さ」
「ん」
「さりげなく背大きいの自慢してるでしょ」
「うん」

ニッ、とイタズラな、だけどとろけそうなくらいに甘い顔で微笑む速水。それを目の当たりにして陽はさらに顔を赤くして、隠すように歩き出してしまったのだった。



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