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「夜は、食堂にはお越しにならないようですが?」
「オレが作って、先輩の部屋で食べてますよー」

陽がそう言うと、林は目を丸くした。自炊する生徒は、珍しいのである。
そうなると、と林が速水に視線を向ける。

「美味しいですか?」

正直、陽の手料理が食べられるなんて羨ましい。その思いが伝わったのか、速水が小さく笑った。

「美味いよ。種類豊富だし」
「そうですか」
「こいつの料理なら一生食いたい」
「あはは、褒めるね先輩」

一人のほほんと笑う陽。速水の言葉に込められた意味を理解しているのかしていないのか、林からは見てとれない。

「オレも先輩にはずっとご飯作ってあげたいなあ。先輩が、オレの望む人になったらだけど」
「どうなって欲しいんですか?」
「先輩には、世界の石油を、」

ニコニコと、林に夢を語る陽。それを微笑ましく眺めながら、速水は陽の手を弄り始める。陽が喋っているから、少し暇だ。

もちろん、そんな速水の些細な行動すら見逃さない林。陽も放っといて速水の好きにさせていて、本当に二人は仲良しなのだと分かる。言葉でのインタビュー以上に、林の目を通して二人の関係が伝わった気がした。

「最後に、お互いに一言お願いします」

たくさんの質問の一番最後、林はそう告げた。陽と速水は互いをチラリと見ると、クスリと笑う。

「今日の晩ごはんは煮込みハンバーグです」
「楽しみです」
「ふふ、先輩はミルクティー作ってね」
「うん。お前は美味しく作ってね」
「うん」

こんなところも、二人らしい。短時間のインタビューだったが、新聞部部長林は、それ以上に得たものがあったようだ。



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