リクエストI
(のびのび屋)
(新聞部インタビュー)
(いたる様リクエスト)
今や、生徒会を凌ぐ勢いで学園の顔となった、千谷木陽。メディアでの注目もさることながら、学園内では速水との関係について常に噂が絶えない。
「と、いうことで。今回は全部正直に話しちゃってください」
ここは、新聞部の部室。そのソファーに速水と陽は並んで座っていて、向かいで眼鏡をかけた生徒、林がボイスレコーダー片手にそう言って微笑んだ。
「メディアの目もありますから、お二人の関係についての直接的な言及は避けます」
「いや、オレたち付き合ってないから」
「またまたー」
陽の訂正にも聞く耳持たずで、二人が付き合っていると信じて疑わない雰囲気。きっと記事にする時も、直接的な表現こそしないものの付き合っていること前提で書かれるのだろう。
陽と速水は半ば諦めたようにソファーにもたれた。一応学園内を騒がせている自覚がそれぞれにあるから、こうして新聞部の取材のオファーも受けたのである。
じゃ、早速始めましょうかとワクワクした様子で、林が切り出した。
「お二人はいつ知り合ったんですか」
「先月、だよね」
「あー、まだ一ヶ月か」
「きっかけは?」
「オレが芝生で寝てたら、たまたま歩いてた先輩が頭蹴飛ばしてきた」
「わざとじゃねえんだけど。足下見ないで歩いてたら、蹴っちった」
「痛かったー」
「ごめんって」
速水が、その時蹴っただろう場所をよしよしと撫でる。陽は、ニコリと笑った。
「でも、それがなかったらこんな仲良しじゃないもんね。だから、嬉しいよオレ」
この時、速水が一瞬ポカンとしたあと、なにかに耐えるように唇を噛んだのを林は見逃さなかった。なるほど、陽の無邪気な発言は破壊力が凄まじいようである。
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