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「うぅ……うるさい」

丁度その時、寝ていた陽が小さくそう呟きながら目を覚ました。寝ぼけ眼を擦りながら、ムクリと起き上がる。陽の寝起きの顔が大好きな速水は、役員の前なのを忘れて優しく微笑んだ。

「ちゃき、おはよ」
「うん、おはよー。膝借りてごめんね」
「いいよ」

とびきり甘い声で言いながら、速水が寝ていて乱れた髪を整えてやる。役員たちはそれをポカンと見ていた。
陽は寝起きでまだ頭がふわふわしているようで、その速水の行為を自然に受け入れながらあくびをかます。

が、ふと陽の目線が役員たちを捕らえた。

「…………は?」

一瞬にして部屋中に、陽の間抜けな声が響き渡る。速水は苦笑した。

「え、なん、え、はぁ?」
「落ち着け。こいつら勝手に入ってきたんだよ。もうバレたし諦めろ」

動揺で眠気も覚めた陽を速水が宥め、頭を撫でる。まだ色々と納得のいかなさそうな陽だが、ひとまず勢いを消してガクリと項垂れた。

「バレたか……」
「うん、まさか僕らも千谷木くんが相手とは思わなかった」
「しかもかなりラブラブ……」

目に見えて落ち込む陽に、双子が本音をポロリ。
まさか、速水のあんなに優しい声を聞けるだなんて思わなかった。速水はサバサバした男だから、そんな姿一生見られないはずだったのに。
陽も陽で自然とそれを受け入れているし、以前副会長によって対面した二人の態度とは似ても似つかない。あの時は、初対面に見えた。

「会長、色々教えてよー」
「知りたいなー、僕ら」

これは面白くなってきた、と役員たちが遠慮なくソファに座る。深くまで話を聞くつもりらしい。
速水は諦めたようにため息を吐いた。陽もまた諦め、全員分のお茶をいれるために立ち上がる。

その日は、夜遅くまで話が絶えることはなかった。



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