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「おじいさんは言いました。なあに、まだまだだいじょうぶだ。おまえがしんぱいすることはないよ」

真央の心配を他所に、悠斗は指定された箇所を、感情をしっかりと込めて読んでみせた。読めない漢字もなく、誰もが安心して聞いていた。

「はい、とてもお上手でした。橘さん、座ってください。どうもありがとう」

暫く読んだあと、教員も満足そうに微笑みそう言ったので、悠斗がホッとして椅子に座る。真央はといえば、悠斗の勇姿に思わず目が潤んでいた。

「バカ、泣くなよお前」
「ゆん、立派になったなあ」

ぐすぐすと音を立てて泣きそうな真央の頭を美馬が乱暴に撫でる。普段はしっかりとしている真央だが、どうも悠斗が関わると少し親バカになる節があるようだ。


そして授業が終わると、休み時間になった。
子どもが恥ずかしがりながら親の元へ行くなか、悠斗は笑顔いっぱいに二人に駆け寄る。

「マオちゃん、タケちゃん!」

勢いよく抱き着いてきた悠斗が可愛くて、真央が頭を撫でた。悠斗もそれを喜んで受け入れたが、隣から美馬が悠斗を抱き上げた。

「ゆん、上手に読めてたな。カッコよかったぞ」

腕に悠斗を乗せ、美馬が優しく微笑む。普段学校ではどんなに血迷っても見せることがない極上の笑顔だが、悠斗や真央の前では大安売りだ。真央に呆れていた美馬だが実は彼も大概親バカで、結局悠斗が可愛くて仕方ないのだ。

「ゆんは、オレの自慢だよー」
「俺も、ゆんが自慢だ」
「ゆんも、タケちゃんとマオちゃんがジマンのお兄ちゃんだよ!」

抱き上げられた悠斗の頬を真央が撫で、端から見れば三人は幸せそのものの家族だった。
そんな、ある日の授業参観の一コマのお話。


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