番外編@
(美馬、真央、悠斗のほのぼの)
(出会った翌日のやり取り)
……………………
真央にとって衝撃的とも言える、美馬との初めての接触の翌日。
真央の仕事はもちろん減ることがないため、今日も悠斗の迎えが夜の8時を過ぎてしまう。真央はメールアドレスを交換した時の美馬の言い付けを守り、迎えが遅くなってしまう旨をメールで送る。
それから風紀委員室に行くと、そこにはいつもの渡部と、美馬の姿があった。美馬がこの時間に風紀委員室にいたのを見たことがなかったため、真央は少し驚いた。
「これから迎えか」
「……はい」
渡部に書類をチェックしてもらいながら、いつもの定位置であるソファーに座る。すると委員長席にいる美馬が携帯電話を見ながら真央にそう尋ねたので、きまりが悪くなりながらも頷いた。
仕方がないことだが、迎えが遅くなってしまうのは美馬に迷惑がかかる。何故なら美馬が迎えの付き添いに行く必要があるからだ。真央はそれをとても申し訳なく思いながら、渡部から書類の確認ができたとの知らせを聞いた。
「帰るか」
「……はい」
美馬が立ち上がり、鞄を持つ。真央もリュックを背負って、内心でぺこぺこと謝りながら、美馬の後について部屋を出た。
夏に向かっているだけあって、外は蒸し暑い。夜でもセミの鳴き声が聞こえて、暑さが増すようだ。
真央の隣を歩く美馬も、気だるそうに制服のネクタイを弛めた。その見慣れない男らしい仕草に、真央はちくしょうカッコいいな、なんて普段使わない悪態の言葉を、心の中で呟いてみる。
「あのさ」
「はい?」
ふと、歩きながら美馬が真央に声をかけた。あまり喋らない美馬の呼び掛けに、真央の胸が少し跳ねた。
「お前んちで夕飯食っていい?」
「え」
予想外の申し出に、真央が驚く。むしろこちらはこうしてお世話になっている訳で、しかも悠斗も美馬をたいそう気に入ったものだから、もちろんそれはOKだ。
真央が了承すると、美馬は「さんきゅー」と笑った。後にこの三人での夕飯が習慣化するのだが、今の真央が知る由もない。
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