-scar‐ 6
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シャワーで冷えた身体を温めたネロはタオルで頭を拭きながらバスルームの扉を開ける。リビングへと移動すると、こちらに気づいたリアラがキッチンの入口から顔を出した。
「あ、ネロ、ちょうどよかった。今ホットココア作ってるから、そこに座ってて」
「ああ。悪いな、色々としてもらって」
「ううん、これくらい何てことないよ。それに、ネロが風邪を引いたら大変だもの」
にっこりと笑って返して、リアラは顔を引っ込める。言われた通りにネロがソファに座ると、しばらくしてリアラがマグカップの乗ったトレーを持ってキッチンから出てきた。
「はい、どうぞ」
「ああ、サンキュ」
「どういたしまして」
お礼の言葉に笑って返すと、リアラはトレーを置きにキッチンへと向かう。すぐに戻ってくると、ネロの向かいのソファに腰を下ろした。
「雨、止まないね」
「ああ。雨足も強かったし、しばらくは止まないだろうな」
ココアを一口口にしてネロは言う。
じっと窓の外を見つめていたリアラはポツリと零す。
「…ダンテさん、大丈夫かな…」
昼頃に依頼に行ったダンテは、もうすぐ帰ってくる予定だ。だが、この雨だとどこかで足止めをくらっているかもしれない。
「まあ、依頼に行くのに傘なんて持っていかないからな、どこかで雨宿りでもしてるんじゃねえの?」
「そう、だね…」
ぎこちなく頷きつつも、リアラは窓から目を離すことはなかった。
いつもなら、心配はしてもここまで気にかかることはないだろう。だが、昨日ネロから聞いた話もあってか、心配でたまらなかった。
いてもたってもいられず、リアラはソファから立ち上がる。
「私、ダンテさんを迎えに行ってくる」
「迎えに行くって…おっさんのいる場所わかるのかよ?」
「気配を辿ればわかるよ。それに…なんだかすごく心配だから…」
そう言うと、リアラは玄関へ向かう。玄関の隅に置いていた小さな傘立てから傘を取り出すと、玄関の扉を開ける。
「ごめんネロ、留守番お願いね」
詫びるように言うと、ネロの返事も待たずにリアラは外へ出て行った。扉の向こうに消えた姿に、ネロはため息をつく。
「…仕方ないか…昨日、あんな話したばっかりだもんな…」
リアラなら心配はないだろうと、ネロは二人の帰りを待つことにした。