-blue sky,blue sea- 13
[ 65/66 ]
「お待たせしました、ジン・トニックとミモザです」
「お、来たか」
「わあ、きれいな色…」
マスターがカウンターに置いたカクテルにリアラは目を輝かせる。ダンテに促されてシャンパングラスを手に取ると、オレンジ色の液体が揺らめいて爽やかな柑橘系の香りがした。
「この匂い…オレンジ、ですか?」
「お、さすがだな。そのカクテルはな、シャンパンにオレンジジュースを加えたカクテルなんだよ。『この世で最も美味しくて贅沢なオレンジジュース』って言われてる」
「そうなんですか…いい香りですね」
「だろ?あと、このカクテルの名前…ミモザって、どこかで聞いたことがないか?」
ダンテに聞かれ、ミモザ…と呟いたリアラはふとあることを思い出す。
「…花の名前、ですか?」
「当たり。リアラは花が好きだろ、だから花の名前がつくカクテルがいいと思ってな」
「ダンテさん…」
ああ、本当に、この人は自分のことをよく考えてくれるな。楽しそうに、けれども優しい笑顔を浮かべる彼にリアラも柔らかな笑顔を返す。
「ありがとうございます」
「喜んでもらえたなら何よりだ。さて、温くならないうちに頂くとするか。あの店主、なかなか洒落たことをしてくれたみたいだしな」
そう言ってダンテが持ち上げたグラスには、飲み口にライムスライスが添えられている。自分の持つシャンパングラスにも同じように飲み口に同じ形のオレンジスライスが添えられていて、言葉の意味に気づいたリアラはふふっと笑う。
「お揃いですね」
「そうだな。じゃあ、乾杯でもするか。乾杯」
「はい、乾杯」
お互いのグラスが合わさり、チン、と音を立てて響き合った。