-blue sky,blue sea- 12
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日が沈み、街に明かりが灯り始めた頃、二人がやってきたのは海沿いにある小さなバー。ダンテがリアラと一緒に酒を飲みたいと言ったためだ。
「いい雰囲気の店だな」
「そうですね、静かで落ち着いていて、とてもいい雰囲気のお店だと思います」
店内にはカウンター席に奥にテーブル席が三つ。仄かで温かみのある照明に照らされた室内はジャズが流れていて、ゆったりとした空気に包まれている。
「どの席がいい?リアラが好きに選んでいいぞ」
「えっと…じゃあ、あそこの席がいいです」
辺りを見回してリアラが指差したのは、窓側のカウンター席。二人が席に着くと、この店のマスターであろう年配の男性が話しかけてきた。
「何になさいますか?」
「俺はジン・トニックで。リアラはあまり酒には詳しくないんだよな、俺が選んでもいいか?」
「あ、はい」
「じゃあ彼女にはミモザを」
「かしこまりました」
頭を下げると、マスターはカクテルを作るためにその場から離れる。それを見計らい、ダンテはリアラに話しかける。
「ごめんな、あまり酒に詳しくないのに俺のわがままに付き合わせてバーに連れてきて」
「謝らなくてもいいですよ、私がいいって言ったんですから。それに、こうして二人でお酒を飲みたいって言ってもらえて嬉しかったですし」
自分が事務所に住み始めた当時から時々ダンテはお酒を飲んでいて、何度か一緒に飲まないかと誘われたこともある。だが、仕事のことも考えて断っていたし、彼もそれがわかっていたから繰り返し誘ってきたりはしなかった。ただ、何度も誘ってもらっているのに断ってばかりなのを申し訳なく思っていた。だから、今回こういう風に誘ってもらって、せっかくの機会だから、とそのお誘いを受けたのだ。
「せっかくの機会ですから、お酒のこといろいろ教えてくださいね、ダンテさん」
「…ああ。でも、飲み過ぎたりするなよ?」
「ふふ、わかってますよ」
彼女の優しさに感謝しながら、ダンテは冗談を混じえて返す。わかっているのか、リアラも笑って返してくれた。そこへ、先程のマスターがカクテルを持って戻ってきた。