-scar‐ 5
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次の日−。
キッチンで洗い物をしていたリアラは蛇口から流れる水の音に混じり、ゴロゴロと唸るような音がするのに気づき、出入口から顔を出した。
「わ、すごい雨…」
リビングの窓から見えるのは、大粒の雨。勢いよく降る雨はザアザアと大きな音を立てており、いつも見える景色は全て灰色に塗り潰されてしまっている。
(ネロ、大丈夫かな…)
昼過ぎに買い出しに行ったネロは傘を持っていない。窓の外を見つめながらリアラが心配していると、バタンと事務所の扉が勢いよく開いた。
「ただいま」
帰宅の意を告げて入ってきたのはネロだった。走って帰ってきたらしく、少し息が荒くなっている。
リアラは小走りでネロに近づく。
「お帰り、ネロ。わ、びしょ濡れ」
「帰りにいきなり降ってきて…くそ、タイミング悪かったな、もう少し早くに帰ってくればよかった」
「待ってて、今タオルを持ってくるから」
踵を返し、リアラはバスルームへと向かう。そしてすぐにバスタオルを持って戻ってきた。
「はい、これ使って」
「ああ、ありがとな」
「どういたしまして。買ってきたもの、キッチンに置いてくるね。その間に濡れた服着替えてきて、すぐに洗濯するから」
「ああ、わかった。濡れないようにコートで覆って持ってきたから、たぶん荷物は大丈夫だと思う」
「そっか、ありがとう」
笑顔で礼を述べ、リアラはネロから食材の入った紙袋を受け取るとキッチンに向かった。