-blue sky,blue sea- 8
[ 60/66 ]
色とりどりの魚達がいる水槽を眺めながら、時々足を止めて、話をする。水槽の明かりだけが頼りの薄暗い中をゆっくりと進んでいた二人は、目の前に見えた明かりに気づく。
「あ、あそこみたいですね」
「そうだな。行くか」
「はい」
頷き、リアラはダンテの手を引いて明かりの方へと向かう。トンネルの入口に一歩足を踏み入れると、僅かだが視界が明るくなった。
「わぁ…」
水中からの白いライトで照らされたトンネルは水の中を通った光により青白く彩られており、透明な壁の向こうを大小様々な魚達が優雅に泳いでいる。静かで仄暗い空間は神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「すごい、本当に水の中にいるみたい…!」
「ほう、よくできてるな」
感動で目を輝かせるリアラに、感嘆の声を漏らすダンテ。
トンネルは大人二人並んだのより少し広いくらいの幅で、いくらか他の客もいて横に並んで歩くと迷惑になりそうだっだため、リアラが前に、ダンテが後ろに並んで歩くことにした。
「いろんな魚がいますね。あ、ダンテさん、上にエイがいますよ!」
「こっちにはサメがいるぞ」
お互いに見つけた魚を教え合いながら、二人は歩く。通路の真ん中に来た辺りで、リアラが足を止めて呟く。
「きっと、海の中もこんな風にきれいなんでしょうね…」
魚達の泳ぐ姿をじっと見つめるその目は水槽の向こうから射し込む光で輝いていて、身体にかかる波の形に揺らぐ光は彼女が海の中にいるように見せる。海の色を纏う彼女はダンテの目にとても美しく映った。
「……」
見ることに夢中になっているリアラに気づかれないように、そっと彼女との距離を詰める。彼女の後ろに静かに手を伸ばし、彼女の頬に顔を近づける。
「!」
肩に置かれた手に気づいた次の瞬間に頬に感じた柔らかな感触に、リアラは目を見開く。
「ほら、そろそろ次に行こうぜ」
すぐにリアラから離れ、彼女の頭にポン、と手を置くと、何事もなかったかのようにダンテは歩き出す。何が起きたかわからず固まっていたリアラはようやく状況を理解して、顔を真っ赤に染める。
「ーっ!!」
他のお客さんがいるのに何してるんですか、と叫びたい気持ちだったが、こんな公共の場で叫ぶなんてそれこそ迷惑になってしまうことで。喉元まで出かかった言葉をぐっと堪え、リアラは早足でダンテの後を追いかけた。