-blue sky,blue sea- 4
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ちゃぷん…
「はぁ…」
暑いお湯に身を浸し、リアラはため息をつく。
楽しみの一つであるバスタイム、しかも今日は夏の暑さを忘れさせてくれるような爽やかなシトラスの香りがする黄緑の湯に浸かっているのに、顔の熱は治まってくれない。
(うぅ、どうしよう…)
夕食の時のダンテの一言が頭から離れず、ずっと頭の中で響いている。その言葉に動揺し過ぎて、どうしよう、どうしよう、と意味もなく同じ言葉が頭の中をぐるぐると回っている。
(本格的なデート、だなんて…)
彼の言う通り、デートなら普段からしているのに。とはいえ、デートと言いつつ、ほとんどは食材や日用品の買い物だから、あまり意識していなかったのかもしれない。恋人になる前から、何度か冗談で買い物デートと言われていたし。
(デート…かあ…)
どこからが『デート』になるのだろう。考え方は人それぞれなのだろうけど。ぼんやりと天井を見上げながら、リアラはダンテの最後の一言を思い出す。
(ダンテさん、明日楽しみにしてる、って言ってた…)
あの一言で余計意識させられた気がしないでもないが、本当に楽しみにしているのだろう、声音で何となくわかった。自分も嫌なわけじゃないし…そう考えていたリアラは、湯船に浸かるまでの自分の行動を思い出して頭を抱えた。
(あああ、何を期待してるの、私!)
身体を洗う時、普段ならいつでも仕事に行けるように石鹸の香りのボディソープを使っているのだが、明日のデートのことを考えていたせいか、プライベート用に買った夏限定のシトラスの香りのボディソープを使っていた。
(ううう…これじゃ、私が一番楽しみにしてるみたい…)
上がってしまった熱をごまかすように、湯船に顔を半分沈める。このまま考えてたら一生終わらなそうだ。
(あまり、考え過ぎない方がいいのかな…)
ダンテに一人で抱え込む癖がある、と言われたことが脳裏に浮かぶ。考え過ぎなのも原因かもしれない、と考え、リアラはよし、と気持ちを入れ替える。
(あまり考え過ぎないようにしよう!せっかくダンテさんが誘ってくれたんだもの、明日を楽しまなきゃ!)
そうと決まれば、明日着る服を考えなければ。リアラは浴槽から勢いよく立ち上がった。