days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-blue sky,blue sea- 3  [ 55/66 ]


「ただいま、リアラ」

「あ、お帰りなさい、ダンテさん」


キッチンで夕食の準備をしていたリアラは扉の開く音に気づき、入口から顔を出す。


「ごめんなさい、今料理中なので手が離せなくて」

「気にしなくていい。あとどれくらいでできるんだ?」

「もうすぐでできますよ、今作ってるので終わりなので。ダンテさんはもう用事、済んだんですか?」

「ああ、大した用事じゃなかったからな。今日の晩飯は何だ?」

「トマトの冷製スープとサラダ、それにマカロニチーズです」

「いいな、美味そうだ」

「すぐ用意しますから、もう少し待っててくださいね」

「ああ」


笑顔で告げると、リアラは顔を引っ込める。ダンテは手を洗うためにバスルームへ向かう。
ダンテがバスルームから戻ってくると、リアラがテーブルに料理を並べているところだった。ソファに座って待っていると、料理を並べ終え、エプロンを置きに行っていたリアラが戻ってきた。


「お待たせしました」

「じゃあ、食べるか」

「はい」


いただきます、と一言言っていつもの食事が始まる。マカロニチーズを口にしたダンテは顔を綻ばせる。


「うん、美味い」

「よかったです。今日はお肉料理がないので、代わりにそれにベーコンを入れてみたんですけど…」

「そうなのか。入ってないのも美味いが、入ったやつも美味いな」


料理を褒められて嬉しそうに頬を緩ませる恋人に、こちらも幸せな気持ちになる。
サラダに手をつけたリアラに食事の手を止め、ダンテは話を切り出す。


「リアラ」

「はい」

「明日、朝から出かけるぞ」

「…はい?」


ダンテの一言に、リアラはパチパチと目を瞬かせる。


「朝から、ですか?」

「ああ。少し、ここから距離があるところだからな」


そう言ってダンテが口にした場所は、ここから電車で三十分程行ったところにある街だった。確かに、ここから少し距離がある。
でも、何でそんな場所に…?


「そこに何かあるんですか?」

「ああ。昨日な、テレビを見てた時にそこに新しい水族館ができたってニュースでやってたんだよ。リアラはまだそういうのに行ったことないだろ?」

「水族館…」


水族館ー確か海の生き物が展示されている場所だ。知識では知っているが、実際に行ったことはない。こくりとリアラは頷く。


「はい」

「な?だから、いい機会だし行ってみようかと思ってな。二人で一緒に遠出したのなんて依頼でくらいだし」


本格的なデートってわけだ、そう付け足してウインクするダンテのその一言は、リアラを動揺させるには充分すぎるものだった。


「デ、デート!?」

「そこまで動揺することでもないだろ、普段からデートと称して買い物に行ってるし」

「そ、そうですけど、でも本格的な、とか…」


本格的な、なんて付け加えられてしまうと変に意識してしまう。真っ赤な顔で俯いてしまったリアラにくすりと笑みを零し、ダンテはリアラの頭を撫でる。


「まあ、あんまり意識し過ぎて寝られなくならないようにな。…明日、楽しみにしてる」

「はい…」


やっとのことで返事をしたリアラに満足そうな笑みを浮かべ、ダンテは食事を再開する。リアラも止めていた手を動かし始めたが、頭の中は明日のことで一杯で、食べても味を感じられなかった。

  
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