days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-blue sky,blue sea- 2  [ 54/66 ]


バスルームから出たダンテが扉を開けると、リビングはしん…と静まりかえっていた。濡れた髪をガシガシとタオルで拭きながら、ダンテは辺りを見回す。


「リアラ?…寝てるのか」


リアラの姿を見つけたダンテはソファに近づく。
背中を丸めるように前のめりになった体勢で彼女は眠っていた。膝の上にたたみかけの服を置いたままなのから察するに、洗濯物を畳んでいる最中に寝てしまったようだ。思わず、フ、と笑みが零れる。


「…お疲れさん」


いつも規則正しい生活をしている彼女だ、深夜までかかる依頼もいくつかやって慣れているが、今回のように朝方までかかる依頼は初めてだ、さすがに疲れたのだろう。起こしてしまわないようにそっと膝の上の洗濯物を避け、彼女の側に置いてあった洗濯物と共に向かいのソファへと移動する。そうして空いたスペースに座ると、ダンテはリアラの肩に手を回し、自分の方へと引き寄せる。引き寄せられるままに自分の膝の上に乗った彼女の頭を労わるように優しく撫でる。
特にやることも思いつかなかったので、テーブルの上のテレビのリモコンに手を伸ばし、電源をつける。聞こえるギリギリまで音量を下げ、何気なくチャンネルを変えていたダンテは、あるニュース番組でボタンを押す手を止めた。


「水族館か…」


ニュースの内容は新しくできた水族館についてで、水族館の中を映像で流しながら、女性のアナウンサーが見所を伝えている。流れる映像をぼんやりと見ながら、そういえば、とダンテは思う。


(デートで遠くに行ったことないな)


よくデートと称して近くの商店街に買い物に行くことはあるが、バイクを使って行くような遠くの街などには行ったことがなかった。行ったとしても依頼ー仕事であって、プライベートではない。


(フォルトゥナには海はあってもこういう施設はねえし、旅の最中でも息抜きにどっか見ることもほとんどなかったみてえだからな…あまりこういうのは知らないんだろうな、リアラは)


17歳で旅に出るまでフォルトゥナから出たことがなく、旅の中でもデビルハンターとしての仕事をこなす毎日で何かを楽しむことなどほとんどなかった彼女。
仕事のことだけじゃない、もっといろんなことを教えてやりたい、見せてやりたい。彼女がここに来た時から思っていたことだが、一緒に過ごすうちに愛しいと思い、気持ちを告げてからはその思いが一層強くなっていると感じる。


「…たまにはいいかもな」


そうと決まれば計画を立てなければ。指通りのいいリアラの髪に指を滑らせ、ダンテは口元を綻ばせた。

  
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