days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-blue sky,blue sea- 1  [ 53/66 ]


「あ゛ー、あっちいな…」


起きたばかりで動きの鈍い身体を動かし一階へ降りてきたダンテは、部屋に漂う熱気に頭をガシガシ掻きながらため息を吐く。窓の外へ目を向ければ雲一つない青空。強い陽射しが部屋の中に入ってきていて、今日も暑くなると告げていた。


「エアコンつけるか…」


リビングのテーブルに置いていたリモコンを取り、エアコンのスイッチをつける。ピッ、と音を鳴らして冷気を吐き出し始めたそれを確認して、ダンテは顔を洗うためにバスルームへ向かう。
元々、この事務所にエアコンはなかったのだが、リアラが暑さで風邪を引いてしまったこともあり、暑いのが苦手な彼女のために最近設置された。最初、ダンテが費用を全て払うつもりだったのだが、話を聞いたリアラが自分もここに住んでいるから払います、と言い出し、最終的には二人で折半することとなった。


「飯、どうすっかね…」


顔を洗ったことでようやく働き始めた頭で考えながら、ダンテはキッチンを見回す。


(ヨーグルトとコーンフレークはあったはずだな…いや、もしかしたらあいつが帰ってくるかもしれないから、ちゃんと作った方がいいか?)


昨日の夕方から依頼に行っているリアラはまだ帰ってきていない。依頼の悪魔は注意深くてなかなか姿を現さない奴らしく、彼女から帰るのは明日になるかもしれない、と言われていた。
どうするかな、とダンテが考えていると、キィ…と扉の開く音が聞こえた。次いで聞こえたのは、愛しい者の声。


「ただいま帰りました」

「おう、お帰り、リアラ」


丁寧に扉を閉めるリアラに近づく。少し疲れた顔をしている彼女の頭を撫で、ダンテは労いの言葉をかける。


「お疲れさん。こんな時間まで大変だったな」

「ありがとうございます。依頼の悪魔が現れたのが深夜で、倒した時には夜が明けていて…そのまま依頼主に依頼完了の報告をしに行ったので、帰りの連絡ができなくて…。すみません」

「気にするな。今昼飯の用意するところだったんだが、リアラも食べるか?」

「頂きます。でも、その前にお風呂に入ってきてもいいですか?外の暑さで汗をかいちゃって…」

「ああ、いいぞ。…リアラも食べるならちゃんと作るか…」


小さな呟きだったのだが耳のいいリアラには聞こえたのか、着替えを取りにいこうと階段を上がっていた足を止める。


「なら、食パンとベーコンが残っているはずなので、それを使ってもらえますか?卵もあるはずです」

「わかった。ベーコンと卵か…焼いてトーストの上にでも乗せるか」

「いいですね、おいしそうです」


楽しみにしてます、と笑顔で告げて、リアラは二階へ向かう。それを見送り、さて、やるか、と口元に笑みを浮かべながらダンテはキッチンに戻った。

  
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