days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-cold and feel lonely‐ 10  [ 52/66 ]


昼前、買い物を済ませて事務所に戻ってきたダンテは自室にいるはずの人物を見留めて目を瞬かせた。


「あ、おかえりなさい、ダンテさん」

「…ただいま。寝てなくていいのか?」

「はい、もうすっかりよくなったので。とはいえ、念のために温かくはしてますが」


笑顔で返すリアラの言う通り、彼女は七部丈のズボンに薄手のカーディガンを羽織っている。
パタパタと軽い音を立ててこちらにやってきたリアラはダンテが持っていた紙袋に視線を移す。


「買い物に行ってきてくれたんですね、ありがとうございます。…あれ?その大きな包み、どうしたんですか?」


小さく首を傾げてリアラが尋ねたのは、ダンテが脇にかかえていた大きな袋。水色をしたそれは口に青いリボンが結ばれていて、普段見ることのない物だった。
あー…と気まずそうにダンテは目を逸らす。


「本当はお前が寝てる間に枕元に置いとこうと思ったんだが…ばれたなら仕方ない、開けてみろ」

「?はい」


大きな包みを手渡され、首を傾げながらもリアラは丁寧にリボンを解く。シュルリ、と音を立てて青いリボンが解かれ、袋の口から顔を覗かせたのは…


「わ…!」


目を大きく見開き、リアラは両手で袋の中からそれを取り出す。姿を現したのは白い狼のぬいぐるみ。ケルベロスより一回り二回り程小さいそれはふわふわとしていて触り心地がいい。
キラキラと目を輝かせるリアラに、ダンテは満足そうな笑みを浮かべる。


「そんなに喜んでもらえるなら、買ったかいがあったな」

「ダンテさん、これ…」

「買い物を終えた帰りにたまたまぬいぐるみの店を見つけてな、入って中を回ってたらそれを見つけたんだ。白い狼なんて、お前みたいだろ?それに…」


一度言葉を切ると、リアラの耳元に口を寄せ、ダンテは囁く。


「これがあれば、俺がいなくても寂しくないだろ?」

「…っ!ダンテさん!」

「ハハハッ!さて、昼飯でも作るかな」


顔を真っ赤にして怒るリアラに声を上げて笑うと、後ろ手にひらひらと手を振りながら、ダンテはキッチンに向かう。持っていた紙袋をテーブルに置き、さて何から作ろうか、と考えていると、くい、と服の裾を引っ張られた。後ろを振り返るとぬいぐるみに顔を埋めたリアラがいて、顔は見えないが耳が赤くなっていて照れているのが丸わかりだった。
目線を合わせないまま、リアラは言う。


「…ありがとう…」

「…ああ」


小さな声で告げられたお礼にフ、と優しい笑みを浮かべ、ダンテはリアラの頭を撫でる。ぎゅっ、とぬいぐるみを抱きしめ、大切にしよう、とリアラは心の中で決めたのだった。



***
2016.12.13

  
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