-cold and feel lonely‐ 9
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「ここに来る前にケルベロスがいつもと様子が違う、って言ってたからな、風邪が悪化したのかと思って心配だったんだ。…でも、部屋に入ってお前の後ろ姿を見て分かった。寂しかったんだな、って」
「…っ」
「少しでも安心させてやりたくて、お前の寝てる布団に潜り込んで後ろから抱きしめた。しばらくしてお前の身体から力が抜けたのを見て、ほっとした」
「あ…」
ダンテの言葉に、リアラはようやく気づく。身を縮めることで変に入っていた力は、今は抜けている。
「リアラ、病気の時は誰だって寂しくなるもんだ。俺もガキの頃はそうだったからな」
「ダンテさん、も?」
「ああ。目を覚ました時に看病してくれてたお袋も、様子を見に来てくれてた親父もバージルも誰もいなくてな。急に寂しくなって、寂しさを紛らわせるために布団に包まって身体を丸めて目を瞑った。お前みたいに」
「……」
「だからな、リアラ。寂しいって思ったことを恥ずかしいと思わなくていい、隠さなくていい。…さっきみたいに素直に寂しいって言っていいんだぞ」
「…うん」
ああ、そうか。寂しいなら寂しいって素直に言っていいんだ、恥ずかしがらなくていいんだ、隠さなくていいんだ。そうだよね、だって目の前にいるのは…。
「…ふふっ」
「?どうした?」
「ダンテさんの言う通りだなあって思って。今、私の目の前にいるのは家族であり、好きな人なんだから、素直に言っていいんだな、って」
「…っ!くそ、かわいいこと言うなよ…」
「えっ、えっ?私、どこでかわいいこと言いました?」
「…いい、気にするな。もう寝ろ、まだ調子よくないだろ?」
無意識の、しかも照れながら言われた言葉に理性が揺らぐが、深くは掘り下げないでおこう。本人は無自覚のようだし。そう心の中で決め、赤くなった顔を隠しながら、ダンテはリアラの頭を撫でる。
「そうですね、もう夜も遅いでしょうし、早く寝ないと。…おやすみなさい、ダンテさん。ありがとうございます」
「ああ。…おやすみ、リアラ」
そう告げると同時に、ダンテはリアラの額に小さく口づけを落とす。くすくすと笑ってそれを受け入れたリアラは甘えるようにダンテに擦り寄り、目を閉じる。
やがて聞こえてきた小さな寝息に安堵の息をつく。目の前の愛しい存在に優しい笑顔を向けながら、ダンテもゆっくりと目を閉じた。