-cold and feel lonely‐ 7
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「ん…」
寝返りを打った拍子にふと目が覚める。隣りにいてくれた人の姿が見当たらず、リアラは緩慢に頭を巡らせる。
「ダンテさん…?」
『起きたか?』
下から声がして、リアラは視線を下ろす。彼がいた場所に代わりのように座っていたのはケルベロスだった。
「ケル…?」
『調子はどうだ、主』
「うん、いいよ。ケル、ダンテさんは…?」
『一時間程前に依頼が入ってな、渋々といった程で出かけたぞ。夕方までには戻ってくると言っていた』
「そう…ダンテさん、仕事に行ったんだ…」
確かめるようにリアラは呟く。窓へと視線を移すと眩い陽射しが目に入り、時間は昼を過ぎたぐらいだと分かった。
「……」
なんでだろう、何となく寂しく感じる。今まで風邪を引いて寝込むことは何度もあったし、こうやって一人で寝るのも当たり前のことのはずなのに。
…はず、なのに。
『…主?』
「…!ごめんケル、ちょっとぼーっとしてた。まだ身体の調子よくないみたいだから、もう少し寝かせてもらうね」
『承知した。ゆっくり眠るといい、我はここにいる』
「うん、ありがとう、ケル。…おやすみなさい」
『ああ』
ケルベロスには悪いと思いつつも彼に背を向ける形で寝返りを打ち、普段より深めに布団に潜り込む。無意識に身を縮めたリアラは、寂しさの理由にようやく思い当たった。
(…ああ、そっか)
今、この部屋に一つ欠けているもの。最近は当たり前のようにいた、大きな存在。
(私は…)
心の中で言葉にする前に弱った身体は考えることを止めてしまい、意識はまどろみの底に沈んでいく。抗うことなく、リアラはゆっくりと目を閉じた。