-cold and feel lonely‐ 6
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「リアラ、お見舞いに来たわよ」
「調子はどう?」
「レディ、トリッシュ!」
入るわよ、と言って顔を覗かせた二人にリアラは笑顔を浮かべる。
「わざわざお見舞いに来てくれたの?ありがとう」
「こっちが勝手に来ただけよ、お礼を言われる程のことじゃないわ」
「あいつからリアラが風邪を引いてるって聞いてね、トリッシュと一緒に様子を見に来たのよ。お土産に果物持ってきたわ、今あいつに用意させてるから」
「本当?ありがとう。でも、後で私がやるのに…」
「いいから、病気の時くらい甘えなさい。いつも貴女がやっているんだから、たまにはあいつにもやらせないと」
「そうよ、あまり色々とやってあげているともっとダメになるわよ」
今でも充分ダメだけど、と言うトリッシュに頷くレディ、それを見て苦笑するリアラ。
リアラが座っているベッドに近づくと、レディはリアラの額に手を当てる。
「熱はどうなの?…まだ熱いわね」
「これでも少し下がったんだけど…」
「半魔の貴女でも風邪を引くことがあるのね。私は悪魔だからその感覚が分からないのだけれど…」
「私が氷属性の半魔だからだと思うよ。ダンテさんみたいに属性がないならこうはならないと思うし」
「そういうものかしら」
トリッシュが首を傾げたその時、コンコン、と部屋の扉をノックする音が響く。
「リアラ、入るぞ」
一言断りを入れ、ダンテが部屋の中に入ってきた。右手には一口に切り分けられたオレンジの乗った皿がある。
「レディからの土産だ。食べられそうか?」
「ありがとうございます、頂きます」
ダンテから皿を受け取り、添えられていたフォークを使ってオレンジを刺すと、口に入れる。程よい酸味と甘みが口に広がって、リアラは笑みを浮かべる。
「美味しいです」
「そうか、よかった」
「ふーん、あんたにしては上手く切れてるじゃない」
「お前な…」
「りんごもあるから後で食べてね、リアラ」
「うん、ありがとう、トリッシュ」
「さて、と…私達はそろそろ行きましょうか」
「そうね」
「二人とも、もう帰っちゃうの?」
「貴女が風邪を引いてるのに長居するのもよくないしね。今度、風邪が治ったらどこかに行きましょう。ダンテ、ちゃんとリアラの看病してあげなさいよ?」
「わかってるよ」
「じゃあね、リアラ」
「うん、気をつけてね、レディ、トリッシュ」
ひらひらと手を振る二人にリアラも手を振り返す。部屋が静かになると、はあ…とため息を吐いて、ダンテが口を開いた。
「あいつら、リアラの見舞いに来るのはいいが…そんなに俺は頼りないか?」
「ふふ、きっとダンテさんのこういう姿、あまり見ないからじゃないですか?」
「まあ、確かにな。俺は風邪なんか引かねえし、第一、リアラにしかこんなことやらないからな」
「ダンテさん…」
笑って言う彼の言葉に、少し恥ずかしく思いながらも、特別だと言われている気がして嬉しくも思う。頬を染めつつも微笑むリアラの額に手を当て、うーん、とダンテは唸る。
「まだ熱いな」
「まだ三日目ですし、そんなに早くは治りませんよ。でも熱は下がってきてますし、もう何日かしたら治りますよ。だから心配しないでください」
「そうは言ってもな…心配はもんは心配だし…」
「ふふ、ありがとうございます。なるべく早く治しますから」
「ああ。…タオル温くなっちまったな、新しい氷水とタオル持ってくるから寝てろ」
「はい」
優しくリアラの頭を撫でると、ダンテは空いた皿と水の入った桶を持って部屋から出て行く。彼の優しさを感じながら、もぞもぞと布団に潜り込んだリアラはゆっくりと目を閉じた。