days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-cold and feel lonely‐ 6  [ 48/66 ]


「リアラ、お見舞いに来たわよ」

「調子はどう?」

「レディ、トリッシュ!」


入るわよ、と言って顔を覗かせた二人にリアラは笑顔を浮かべる。


「わざわざお見舞いに来てくれたの?ありがとう」

「こっちが勝手に来ただけよ、お礼を言われる程のことじゃないわ」

「あいつからリアラが風邪を引いてるって聞いてね、トリッシュと一緒に様子を見に来たのよ。お土産に果物持ってきたわ、今あいつに用意させてるから」

「本当?ありがとう。でも、後で私がやるのに…」

「いいから、病気の時くらい甘えなさい。いつも貴女がやっているんだから、たまにはあいつにもやらせないと」

「そうよ、あまり色々とやってあげているともっとダメになるわよ」


今でも充分ダメだけど、と言うトリッシュに頷くレディ、それを見て苦笑するリアラ。
リアラが座っているベッドに近づくと、レディはリアラの額に手を当てる。


「熱はどうなの?…まだ熱いわね」

「これでも少し下がったんだけど…」

「半魔の貴女でも風邪を引くことがあるのね。私は悪魔だからその感覚が分からないのだけれど…」

「私が氷属性の半魔だからだと思うよ。ダンテさんみたいに属性がないならこうはならないと思うし」

「そういうものかしら」


トリッシュが首を傾げたその時、コンコン、と部屋の扉をノックする音が響く。


「リアラ、入るぞ」


一言断りを入れ、ダンテが部屋の中に入ってきた。右手には一口に切り分けられたオレンジの乗った皿がある。


「レディからの土産だ。食べられそうか?」

「ありがとうございます、頂きます」


ダンテから皿を受け取り、添えられていたフォークを使ってオレンジを刺すと、口に入れる。程よい酸味と甘みが口に広がって、リアラは笑みを浮かべる。


「美味しいです」

「そうか、よかった」

「ふーん、あんたにしては上手く切れてるじゃない」

「お前な…」

「りんごもあるから後で食べてね、リアラ」

「うん、ありがとう、トリッシュ」

「さて、と…私達はそろそろ行きましょうか」

「そうね」

「二人とも、もう帰っちゃうの?」

「貴女が風邪を引いてるのに長居するのもよくないしね。今度、風邪が治ったらどこかに行きましょう。ダンテ、ちゃんとリアラの看病してあげなさいよ?」

「わかってるよ」

「じゃあね、リアラ」

「うん、気をつけてね、レディ、トリッシュ」


ひらひらと手を振る二人にリアラも手を振り返す。部屋が静かになると、はあ…とため息を吐いて、ダンテが口を開いた。


「あいつら、リアラの見舞いに来るのはいいが…そんなに俺は頼りないか?」

「ふふ、きっとダンテさんのこういう姿、あまり見ないからじゃないですか?」

「まあ、確かにな。俺は風邪なんか引かねえし、第一、リアラにしかこんなことやらないからな」

「ダンテさん…」


笑って言う彼の言葉に、少し恥ずかしく思いながらも、特別だと言われている気がして嬉しくも思う。頬を染めつつも微笑むリアラの額に手を当て、うーん、とダンテは唸る。


「まだ熱いな」

「まだ三日目ですし、そんなに早くは治りませんよ。でも熱は下がってきてますし、もう何日かしたら治りますよ。だから心配しないでください」

「そうは言ってもな…心配はもんは心配だし…」

「ふふ、ありがとうございます。なるべく早く治しますから」

「ああ。…タオル温くなっちまったな、新しい氷水とタオル持ってくるから寝てろ」

「はい」


優しくリアラの頭を撫でると、ダンテは空いた皿と水の入った桶を持って部屋から出て行く。彼の優しさを感じながら、もぞもぞと布団に潜り込んだリアラはゆっくりと目を閉じた。

  
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