days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-cold and feel lonely‐ 5  [ 47/66 ]


「風邪を引いた?リアラが?」

「ああ」


確かめるような言葉にダンテは頷く。
夜が明け、珍しく朝早くに目が覚めたダンテはリアラの父親であるゼクスへ電話をかけた。父親に相談しても原因は分からなかったとリアラは言っていたが、二人は血の繋がった親子だ、何かしら意見は聞けるだろうと思ったのだ。
そうか…とゼクスは頷く。


「あの子から話は聞いていたが実際見た訳ではないから、どうしたものか私も分かりかねていてな…。そもそも、悪魔である私は病気になどならないし…」

「…だよな。リアラと血の繋がったあんたからなら何か聞けると思ったんだが…」


ダンテの言葉に、何か考えているのか少しの間黙り込むと、そうだな…とゼクスは口を開いた。


「これは、私個人の考えだが…魔狼の血が関係しているのは、間違いないと思う」

「魔狼の血が?」

「ああ。魔狼の一族は皆共通して氷属性を持っている。だから、昔から炎属性の悪魔とは相性が悪くてな…それはお前も知っているだろう?」

「ああ」

「氷属性ゆえに体温が低く、寒さに強いわけだが…その反面、暑さには弱い。というより、慣れていないと言った方が正しいか。とはいえ、完全な悪魔である私は暑いのが苦手なだけで、それで体調を崩すことはないんだが…」


ただ、とゼクスは続ける。


「あの子は、半分はフィーリアの…人間の血を引いているだろう?それゆえに急激な環境の変化に身体がついていけず、風邪として症状が出てくるんだろう。生まれた時からずっとフォルトゥナにいたからな、フォルトゥナは夏でも比較的涼しい土地だし…旅をしている中で暑さの厳しい土地に行った時、身体が過剰に反応してもおかしくはない」

「魔狼の血と人の血、両方の悪い面が合わさっちまった、ってことか」

「ああ」


頷くゼクスに、ダンテは静かな声音で尋ねる。


「…治してやることは、できないのか?」

「…無理だろう。あの子の力である程度症状を緩和できたとしても、あの体質は治しようがない。半分は人間、半分は悪魔の血を引くゆえの定め、と言えるだろうな」

「…そうか」

「そんなに気を落とさないでくれ。私も歯痒く思っているんだ、自分の娘なのに何もしてやれない」

「…そうだな、悪かった」

「謝ることではないさ。こうして私に電話したんだ、あの子を助けるために何かしら手がかりが欲しかったんだろう?そこまであの子のことを思ってくれる人が傍にいてくれて、私は本当によかったと思っているよ。それがお前でよかった、と」

「ゼクス…」

「だから、あの子を…リアラを、よろしく頼む」

「…ああ」


優しさの滲む声音にしっかりと答え、ダンテは静かに受話器を置く。


「…ちゃんと、傍にいてやらないとな」


そろそろリアラも起き出す頃だろう。風邪ゆえに普段より遅いとはいえ、彼女の性格上、朝にはきっちりと起きるだろうから。寄りかかっていた机から身を離し、ダンテは二階へと向かった。

  
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