-scar‐ 3
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翌日。
「リアラ、窓拭き終わったぞ」
「あ、ありがとう、ネロ。こっちも終わったから、片付けてお茶にしよっか」
「おう。あ、ほうきこっちによこせよ。ついでで片付けてくるから」
「本当?ありがとう。じゃあ、私はお茶の準備してくるね」
「ああ」
ネロはほうきと雑巾の入ったバケツを持つと廊下の奥へ向かい、リアラはお茶の準備のためにキッチンへと向かう。
今朝、珍しく依頼が入ってきてダンテはすぐに依頼先に向かった。事務所の主がいないのであれば迷惑はかからないから、普段できないところを掃除しようと考えたリアラにネロが手伝いを申し出て、こうやって二人で掃除をしていたのだ。
「はい、どうぞ。あ、ネロは紅茶じゃない方がよかった?」
「いや、大丈夫。あっちの事務所でよくキリエの淹れた紅茶飲んでるから」
「そう、よかった」
微笑んで返し、リアラはネロの向かいにもう一つティーカップを置くと、ソファに腰掛ける。そして、ネロがティーカップに口をつけたのに続くように、自分もティーカップに口をつける。
「美味いな、これ」
「本当?よかった。それ、お気に入りの紅茶屋さんのなの」
「そうなのか。これ、キリエへの土産にしたら喜ぶかな…」
「よかったら、そのお店に案内してあげようか?明日、依頼がなかったら一緒にどう?」
「本当か?助かる、頼むよ」
「うん、わかった」
ネロの言葉にリアラは笑顔で頷く。
再び紅茶を口にした後、ネロは静かに口を開く。
「…あのさ、リアラ。一つ、聞きたいことがあるんだけど」
「ん?何?」
「…おっさんのことなんだけど…」
「ダンテさんの?」
首を傾げるリアラにネロは頷く。
「時々、なんだけどさ。雨が降ってる時、おっさん何かを思い出すように遠くを見つめて悲しそうな顔するんだ。…何か、雨の日に嫌な思い出でもあるのかと思って」
「雨…」
呟き、口元に手を当てて思案するリアラはゆっくりと口を開く。
「…それ、私のせいかもしれない」
「…え?」
思いがけない言葉に目を見開くネロに、リアラは続ける。