-young lady and guard‐ 17
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「残念だったな」
「…っ!」
ガチャリ、と音がし、女の額に冷たい物が突きつけられる。上着の中に隠していたホルスターから素早くエボニーを取り出し構えたダンテは、ニヤリと笑う。
「どうして!?私の術で虜にしたはずなのに…!」
「かかったフリをしてたんだよ。しばらく様子を見るためにな」
そう言うと、素早く上半身を起こし、ダンテはエボニーの引き金を引く。ギリギリのところで銃弾をかわし、女は地に足をつくと悔しそうに顔を歪める。
「どこで私が悪魔だと気づいた?気配は上手く隠したはずなのに…!」
「最初っからさ。気配は隠れてても匂いでわかるからな」
ゆっくりと立ち上がると懐からアイボリーを取り出し、両手に収まる双子銃を構えながら、ダンテは女を見据える。
「さあ、もう逃げられないぜ。覚悟するんだな」
「くっ…!」
逃げ場を失い、女はギリッと唇を噛み締める。俯いたように見えた次の瞬間、女はリアラへと鋭い視線を向けた。
「女ぁ!」
「!」
素早い動きで地を蹴ったかと思うと、 瞬く間に姿を変え、女ー悪魔は細長く伸びた蛇の身体でリアラを絡め捕らえた。
「リアラ!」
『ふふ…これで立場が変わったわね。さあ、この女が苦しむところを見たくなかったらその銃を下ろしなさい』
勝ち誇った笑みを浮かべながら、悪魔は身体に力を込める。徐々に強まる圧力にリアラが顔を歪め、悪魔の笑みが深まる。
だが。
「…なめんじゃないわよ」
『!』
地を這うような低い声が響いたかと思うと、ビシリ、と何かが凍りつく音が悪魔の耳に届く。悪魔が音のした方を見やると、リアラの手が触れているところから身体が凍り始めていた。
「このまま氷の彫像になりたいって言うなら止めないけど?」
『っ!』
見上げるリアラのゾクリとするような冷たい視線に、悪魔は身を引こうとする。だが、逃がさないとばかりにリアラは悪魔の尾を掴んだ。
「逃がさないわよ」
『ひっ…!』
ひきつった声を上げた悪魔へ、す、とリアラの手が向けられる。次の瞬間、悪魔の叫び声が夜の静寂にこだました。