-young lady and guard‐ 16
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「やっと二人きりになれた…」
木々の繁みに隠れ、女は甘い声を零す。
「前から、貴方のことが気になってたの。どの人よりも魅力的で、すてきで…」
乗り上げた男の頬に手を伸ばし、つつ、と細い指先で撫でると、女は色っぽく目を細めて誘う。
「ねえ…私と、いいこと、しましょ?」
赤い唇が笑みを形作り、男の唇に重なりかけた、その時。
「ダンテさん!」
突如響いた高い声に、女は顔を歪め、不機嫌そうに身を起こす。
「せっかくの楽しみの時間を邪魔してくれちゃって…空気を読みなさいよ、このクソガキ」
「あんたの空気なんか読みたくないわよ。ダンテさんから離れて」
鋭い視線を返し、リアラは強い語調で言う。女は歪んだ笑みを浮かべると、無理ね、と告げる。
「この人は術で私の虜にしてあるもの、もう私から離れられないわ」
「本当にそう思ってるの?ダンテさんにあんたの術が効くわけないじゃない」
「私の術で虜にならなかった男はいないわ。例え、相手がスパーダの息子だったとしてもね」
「…わかっててやったのね」
「ええ、あんたがゼクスの娘だってことも知ってるわ。それにしても、吊り合わない組み合わせね。私の方がよっぽど彼と吊り合ってるわ」
「…何であれ、ダンテさんにあんたの術は効かないわ。ちゃんと見たらどう?」
「話のわからない女ね。そんなに言うなら、証拠を見せてあげるわ」
そう言うと、女はダンテの頬に手を添える。口づけようと視線を合わせた、その時。