-scar‐ 2
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「あー、疲れた…」
「なかなかの大物だったな。報酬もそれなりに貰えたし、上出来だ」
「まあ、いつもよりは楽しめたかな」
今日の依頼の感想を言いながら、二人は事務所への帰り道を歩く。
空を見上げながら、ダンテは呟いた。
「今日の昼飯は何だろうな」
「さあな。ただ、リアラが朝にパン買ってきてたから、サンドイッチとかじゃねえの?」
「そうか。ま、リアラの作るもんなら何でもうまいからな」
そう言って上機嫌で歩くダンテに、ネロは呆れたようにため息をつく。
「おっさん、本当リアラのことになると機嫌よくなるよな。気持ち悪ィ」
「お前も彼女ができればわかるさ。早く嬢ちゃんとくっつきな」
「余計なお世話だ!」
憤慨するネロにハハッと笑って返しながら、ダンテは事務所の扉を開く。
「ただいま、リアラ」
「お帰りなさい、ダンテさん。ネロもお帰り」
「…おう」
帰宅の言葉を告げてすぐ、リアラが出迎えてくれた。昼食を作っていたのか、エプロンをつけている。
「今日の昼飯は何だ?」
「BLTサンドです。依頼終わってお腹空いてるだろうから、ボリュームのあるものにしました」
「いいな、うまそうだ」
「二人ともそこに座っててください、今スープを入れますから」
「ああリアラ、ちょっと待て」
「はい?」
呼び止められたリアラが振り返ると、ダンテは彼女の後頭部に手を添え、額にキスする。
「…っっ!!?」
「まだしてなかったからな」
ただいまのキス、と続けるダンテに、リアラは額を押さえ、顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「っ、しなくていいです!それに、ネロの前ではこういうことしないでくださいって何度も言ったじゃないですか!」
「いいだろ、恋人同士だし」
「時と場所を考えてください!…ごめんね、ネロ」
「いや…もう慣れたよ」
申し訳なさそうに謝るリアラに、ネロは諦めたように返す。
ここに来てからほぼ毎日のように見せられる、ダンテからリアラへの行ってきますのキスとただいまのキス。最初はびっくりしたものだが、今ではただただ呆れるだけだ。それに、リアラが悪いのでなく、悪いのはこの中年のおっさんだ。
「ははっ、慣れたんならいいじゃねえか。もう少し増やすか?」
「なっ…!」
「ちょっとは自重しろよ、このエロ親父!」
「…ダンテさんはお昼ご飯なしです」
「おっと、それは困るな。機嫌直してくれよ、リアラ」
「知りません」
ぷいっと顔を背け、スタスタとキッチンへ向かうリアラに、謝りつつも全く反省の姿が見えないダンテ。二人の様子に、ネロははぁ、とため息をつくのだった。