-young lady and guard‐ 12
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「ふぅ、疲れた」
風呂に入って一日の疲れをとったリアラは安堵のため息を漏らす。日中は依頼主の親族として、夜はデビルハンターとして過ごす中、日付が変わり朝が来るまでのほんの数刻、この時間が唯一の安らぎのひと時だ。
廊下を歩き、広いリビングへと移動したリアラはソファに横たわる影に気づく。首を傾げつつソファへと近づくと、ダンテが横になって眠っていた。
「寝ちゃってる…」
コートを脱ぐのも面倒だったのか、仕事を終えた姿のまま横になっている。大きなソファとはいえ背の高いダンテの身体は収まりきらなかったようで、組んだ足がはみ出ていた。
(この数日間、朝早くから仕事してるもんね…疲れちゃったんだろうな)
普段の彼なら寝ていたっておかしくない時間、その時間も護衛として働かなければいけない。それに加えて夜は本業をこなさなければいけないのだから、疲れるのも仕方ないだろう。
(お風呂が空いたから伝えようと思ったんだけど…起こすのも悪いな)
そっとしておこう、そう思い、彼が風邪をひかないようにブランケットを探しにその場を離れようとした時、ダンテが身じろいだ。
「ん…」
ゆるゆると瞼を開き、ダンテは視線を彷徨わせる。まだ眠いのか、その目は開ききっていない。
寝ぼけ眼でリアラを視界に捉えると、ダンテは口を開く。
「リアラ…」
「すみません、起こしちゃいましたか?」
「いや…そろそろ起きようと思ってたところだ」
あくびを噛み殺すと、のそりとダンテは起き上がる。正面に回り、リアラはダンテに言う。
「お風呂空きましたよ」
「ああ…」
「まだ眠いですか?」
「少しな」
話してる間も眠そうで、少しぼーっとしているように見える。んー、と首を傾けて考える仕草をとったリアラはある提案をする。
「もう少し寝たらどうですか?私が起こしますから」
「それだとお前が寝られないだろ。お前も疲れてるだろうし…」
「もう少しくらいなら大丈夫ですよ。私のことは気にしないでください」
柔らかな笑みを向けられ、リアラがそう言うのなら、とダンテは少し甘えることにした。
「じゃあ、そうさせてもらうとするかな」
「はい。…あ、そうだ」
「?」
何かを思いついたのか、リアラはダンテの隣りに座る。そして、招くように自分の太腿を叩いて言った。
「どうぞ」
「…いいのか?」
「だって、寝辛くないですか?」
こてりと首を傾げてリアラは返す。よかれと思ってやっているのだろうが、無防備なその姿は恋人として心配になる。まあ、自分にそういう姿を見せてくれるのは嬉しいからいいのだが。
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
「はい、どうぞ」
ゆっくりと身体を倒し、ダンテはリアラの太腿に頭を乗せる。女性特有の温かく柔らかな感触と微かに香る石けんの匂いに、たまにはこうやって甘えるのもいいな、とダンテは緩く笑みを浮かべる。
「一時間経ったら起こしてくれ」
「わかりました」
リアラが頷くのを確認し、ダンテは目を閉じる。ゆっくりと彼女の手が頭の上に乗せられる。優しく頭を撫でる彼女の手が眠気を誘い、ダンテは睡魔に身を委ねた。