-young lady and guard‐ 8
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「広いですね…」
「他の屋敷と比べてもだいぶ大きかったからな、この中で一番の金持ちだろうな」
広い廊下を歩きながら、二人は小さな声で会話する。
一週間後、ダンテとリアラは依頼人の屋敷がある別荘地へと来ていた。依頼人の屋敷を訪ねた今は、メイドに案内されて依頼人のいる部屋へ向かっている最中だ。
「リアラはこういう所に来るのは初めてか?」
「そうですね、お屋敷なら何度か依頼で行ったことがありますけど、こういった別荘は初めてです」
「そうか。まあ、屋敷とそれ程仕組みは変わらねえけどな。慣れないだろうが、あまり気を張るなよ」
「はい、ありがとうございます」
「着きました」
メイドの言葉に二人は足を止めた。顔を上げた先には金で縁取られた豪奢な白い扉。ノックして中へと声をかけたメイドがゆっくりと扉を開ける。中には一人掛けのソファに座り葉巻を咥えた細身の男性と、その隣りに付き添うように立っている白髪の男性がいた。
「来てくださいましたか、こちらへどうぞ」
「失礼します」
依頼人であろう細身の男性に声をかけられ、会釈をしてリアラは部屋の中に入る。ダンテもそれに続く。
勧められたソファに二人が座ると、男性は話を始める。
「さっそくですが、話を始めましょうか。仲介人から話は聞いているかと思いますが、ここ最近、屋敷の庭に悪魔が現れるんです。それに、なぜか男ばかりが狙われる」
「はい、聞いています。毎晩出るわけではないんですよね?」
「ええ。一人でいるところを狙っているらしく、昨夜また一人…気分転換のためにここに来ているのに、これでは気が休まらない。四日後にはこの屋敷でパーティーもあるのに…」
「一人でいるところを狙うのなら大勢の人が参加するパーティーは狙わないと思いますが、万が一ということもありますし…早めに対処した方がよさそうですね」
「ええ、お願いします。ああ、よかった…デビルハンターの方が二人も来てくれたとなるとこちらも心強いです」
「ありがとうございます」
安堵したと言いつつもこちらをジロジロと見てくる依頼人に気づかないふりをしながら、リアラは笑顔で答える。隣りにいるダンテとしては何か一言二言言ってやりたい気分だったが、リアラが我慢しているのにそんなことをするのは大人気ない、とぐっと堪える。
「では、さっそく今夜からお願いします。依頼中にお二人が滞在する部屋は後程執事に案内させますので」
「わかりました」
あと、と依頼人は続ける。
「仕事をして頂くにあたって、お二人に一つ、お願いがあります」
「はい、何でしょう?」
リアラが尋ねると、依頼人は口を開く。
「それは…」