-young lady and guard‐ 7
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「…リアラ、あいつに俺がお前と付き合ってるって話したか?」
「え?いいえ、話したことはありませんけど…。事務所に住むことになった時、探してる人が見つかってその人の事務所に住むことになった、って手紙で知らせたくらいで…」
「ふーむ…」
顎に手をやり考える仕草をすると、ダンテは呟く。
「…たぶんあいつ、俺とお前が付き合ってるって気づいてるぞ」
「え!?本当ですか!?」
「ああ。最後に『後はお二人でごゆっくり』、って言ってただろ?あいつなりに気を遣ったんじゃないか?」
「そう、なのかな…あああ、どうしよう、恥ずかしい…」
たちまち顔を真っ赤に染め、両手を頬に添えたリアラに、かわいいことしてんなぁ、と緩みそうになる口元を抑えながら、ダンテはリアラの頭をポンポンと撫でる。
「まあ、いつかはバレることだったんだし、隠すこともないだろ。早めにバレてよかったんじゃないか?あからさまに聞くようなこともされなかったし」
「うぅ…それでも恥ずかしい…」
「俺は嬉しいけどな、リアラが盗られる心配がないし」
「…っ、ダンテさん!」
「ははっ、そう怒るなって」
店の中ゆえ小声で怒るリアラを宥め、それにしても、とダンテは続ける。
「女だからって仕事ができるか疑うとはな…なめられたもんだ、そんな簡単にできる仕事じゃねえってのに」
「仕方がないですよ、女性のデビルハンター自体少ないですし、悪魔が相手ですしね。多いですよ、そういう人」
「…いろいろと、言われたりしたのか?」
「まあ、文句を言われるのはしょっちゅうですよ。依頼を終わらせれば何も言わなくなりますけどね。たまに掌を返して急に優しくなったりする人もいましたけど」
そういうのは嫌いなので一蹴しましたけどね、と苦笑するリアラ。何か思うことがあったのか、ダンテは真剣な目でリアラを見つめると、口を開く。
「…何かあったらすぐに言うんだぞ。お前は一人で抱え込む癖があるからな」
「!…はい」
その言葉に少し驚いたリアラだが、自分を心配するゆえの優しさだとわかり、嬉しさにふわりと笑みを浮かべる。
「そろそろ帰りましょうか、依頼に行く準備もしないといけませんし」
「晩飯の買い出しもしていくか?」
「そうですね。今日の晩ご飯、ダンテさんは何が食べたいですか?」
「んー、特に思い浮かばないな。リアラに任せるよ」
「わかりました、じゃあ、買い物しながら決めますね」
「ああ」
喫茶店を後にし、二人は並んで帰り道を歩く。
ふいに、リアラがダンテの手を掴んだ。
「ん?どうした?」
「…何でもないです。ただ、こうしたくなって」
そう言って笑うリアラに、ダンテも柔らかな笑みを浮かべる。
「…そうか」
緩く彼女の手を握り返し、穏やかに流れる時間を感じながら、ダンテはゆっくりと歩みを進めた。