-young lady and guard‐ 3
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「リアラ」
その呼びかけにリアラが顔を上げると、突然腕を引っ張られた。急なことに体勢を崩したリアラだったがすぐさま何かに受け止められ、顔を上げる。見上げた先にはダンテの顔があり、どうやら自分は彼の上に乗り上げる形になってしまったらしい。
「ダ、ダンテさん!?」
今の状況をようやく理解し顔を真っ赤に染めたリアラは慌てて避けようとするが、先回りするかのようにダンテの腕が自分の腰に回され、動きを封じられてしまう。流れるような動きで抱き抱えられるような体勢にされてしまい、リアラは視線を彷徨わせる。
あのな、とダンテが口を開いた。
「俺が気にしてるのはそこじゃないし、それ以前にお前に敬語を止めてほしいなんて一度も思ったことはない。お前が敬語を使うのは性格上身についた癖みたいなもんだろうし、俺が年上だからつい使っちまうんだろ?」
「…はい…」
「癖を直すのはそう簡単なもんじゃねえし、敬語なんて無理に直すもんじゃないだろ。時間が経てば自然になくなるさ」
それに、とダンテは続ける。
「仕事で使う敬語と俺に使う敬語、比べればけっこう違うところもあるからな。俺に対してはちょいちょい崩れてるし」
「そう、ですか…?」
「ああ。お前あんまり意識してないから、気づいてないだろうけどな」
そう言われ、リアラは自分の話し方を思い返してみる。確かに言われてみれば、頷く時に時々敬語じゃなくなっている。
でも、それなら。
「じゃあ、ダンテさんは何を気にしてたんですか…?」
そう、問題はそこだ。ダンテは一体、何を気にしていたのか。
ダンテは気まずそうに視線を逸らすと、小さな声で零した。