-scar‐ 12
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「じゃあ、これで」
「うん、気をつけてね」
「あっちでもちゃんと修行しろよー」
「わかってるよ」
朝、フォルトゥナへと戻るネロを見送るためにリアラとダンテは事務所の玄関先にいた。
ダンテを見やり、ネロは言う。
「おっさん、リアラを困らせるようなことすんなよ。リアラもあまり無理しないようにな」
「はいはい」
「うん、ありがとう」
ダンテはひらひらと手を振り、リアラは頷く。荷物を担ぎ直すと、ネロは街の外へ続く道を歩き出す。
「またね、ネロ!」
「ああ、また!」
手を振るリアラに、ネロも手を振り返す。やがてネロの姿が見えなくなると、背伸びをしたダンテがさて、と口を開く。
「この後、どうするかね…」
「あの…」
おずおずと服の裾を引っ張ったリアラに、ダンテはどうした?と視線を向ける。
「この後、朝ご飯の片付けが終わったら…一緒に、出かけませんか?」
珍しい彼女からのお誘いに、ダンテは目を瞬かせると嬉しそうに笑みを浮かべる。
「珍しいな、リアラから誘うなんて」
「たまにはいいかな、と思って…」
「そういうお誘いなら大歓迎だ」
恥ずかしそうに頬を染めるリアラの腰を引き寄せると、ダンテは彼女の柔らかな唇に自分の唇を重ねる。キスされたのだとわかって真っ赤になるリアラに楽しそうに笑うと、ダンテは優しくリアラの手を引く。
「じゃあ片付けたら出かける準備でもするか、お姫様?」
「…もう…」
拗ねつつも嬉しいのは事実で、リアラは柔らかな笑みを浮かべる。それに優しい笑みを返すと、ダンテはリアラを連れて事務所の中に入った。
***
2015.04.03