-scar‐ 11
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「…違う」
「リアラ?」
「違う…ダンテさんは弱くない」
首を振ると、リアラはダンテに抱きつく。
「自分を許してやれって言ったのは、ダンテさんが大切なものを守れなかった痛みをわかっているから。辛い記憶を忘れられないのは、心の傷として残っているから。…ダンテさんは優しいから、そう思うんです」
ぎゅっ、と腕の力を強めてリアラは続ける。
「辛いことを思い出してしまうことは、誰にだってあります。それは、弱さなんかじゃない。痛みを知ってるからです。だから、」
顔を上げ、リアラはダンテを真っ直ぐに見つめる。
「私にも、痛みを分けてください。前に、ダンテさんが私の苦しみを和らげようとしてくれたように」
どうか、独りで悩まないでほしい。悩んでいるのなら、苦しんでいるのなら、いくらだって聞くから。
「ダンテさんの苦しみを分かち合いたいんです。傍にいさせてくれるなら、それくらいはさせてください」
「リアラ…」
ああ、本当にお前はどこまで優しいんだ。ふ、と笑みを零し、ダンテは口を開く。
「…ありがとな」
手を伸ばしリアラの頬を撫でると、じゃあ、とダンテは続ける。
「ちょっと、甘えさせてもらってもいいか?」
「甘える?どんな…」
リアラが言い切る前に、ダンテは身体を傾け、リアラの胸へ頭を預ける。そのまま背中へ腕を回したダンテにリアラは慌てる。
「ダ、ダンテさん!?」
「少し…このままでいさせてくれ」
そう告げ、ダンテは目を閉じる。微かに香る彼女の匂いに、密着した部分から伝わる、心臓がトク、トク、と鼓動を刻む音。彼女がここにいるのだと、確かに存在しているのだと感じられる。
「……」
しばらく黙っていたリアラは、もぞもぞと動いて体勢を変える。ソファに足を乗せ、しっかりとダンテの方へ身体を向けると、胸に寄りかかる彼の頭へ手を伸ばし、ゆっくりと撫で始めた。もう片手は背中へと伸ばし、ポンポンとあやすように動かす。
包まれる感覚に深く息をついたダンテは、胸の痛みが和らぐのを感じた。