days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-scar‐ 11  [ 11/66 ]


「…違う」

「リアラ?」

「違う…ダンテさんは弱くない」


首を振ると、リアラはダンテに抱きつく。


「自分を許してやれって言ったのは、ダンテさんが大切なものを守れなかった痛みをわかっているから。辛い記憶を忘れられないのは、心の傷として残っているから。…ダンテさんは優しいから、そう思うんです」


ぎゅっ、と腕の力を強めてリアラは続ける。


「辛いことを思い出してしまうことは、誰にだってあります。それは、弱さなんかじゃない。痛みを知ってるからです。だから、」


顔を上げ、リアラはダンテを真っ直ぐに見つめる。


「私にも、痛みを分けてください。前に、ダンテさんが私の苦しみを和らげようとしてくれたように」


どうか、独りで悩まないでほしい。悩んでいるのなら、苦しんでいるのなら、いくらだって聞くから。


「ダンテさんの苦しみを分かち合いたいんです。傍にいさせてくれるなら、それくらいはさせてください」

「リアラ…」


ああ、本当にお前はどこまで優しいんだ。ふ、と笑みを零し、ダンテは口を開く。


「…ありがとな」


手を伸ばしリアラの頬を撫でると、じゃあ、とダンテは続ける。


「ちょっと、甘えさせてもらってもいいか?」

「甘える?どんな…」


リアラが言い切る前に、ダンテは身体を傾け、リアラの胸へ頭を預ける。そのまま背中へ腕を回したダンテにリアラは慌てる。


「ダ、ダンテさん!?」

「少し…このままでいさせてくれ」


そう告げ、ダンテは目を閉じる。微かに香る彼女の匂いに、密着した部分から伝わる、心臓がトク、トク、と鼓動を刻む音。彼女がここにいるのだと、確かに存在しているのだと感じられる。


「……」


しばらく黙っていたリアラは、もぞもぞと動いて体勢を変える。ソファに足を乗せ、しっかりとダンテの方へ身体を向けると、胸に寄りかかる彼の頭へ手を伸ばし、ゆっくりと撫で始めた。もう片手は背中へと伸ばし、ポンポンとあやすように動かす。
包まれる感覚に深く息をついたダンテは、胸の痛みが和らぐのを感じた。

  
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