-scar‐ 9
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自室のベッドで横になっていたダンテはなかなか来ない眠気に眉根を寄せ、目を開けた。
(…眠れねえ)
寝返りを打ち体勢を変えるが、そんな簡単に眠気が来るわけがなく。同じことをかれこれ一時間繰り返していた。
「…はあ…」
ため息をつき、ダンテはゆっくりと起き上がる。こうしていても仕方がない、気分転換に水でも飲んでこよう。
部屋を出て階段を下りると、足音に気づいたのかリビングから声がかかった。
「ダンテさん」
ダンテが顔を上げると、ソファに座っていたリアラの姿があった。右手にはマグカップを持っており、ふわりと湯気が立ち上る。
こてりと、リアラが首を傾げる。
「眠れないんですか?」
「ああ、ちょっとな」
「だいぶ早い時間に寝ましたからね…ココアでもよかったら作ってきましょうか?」
「ああ、頼む」
「わかりました、ちょっと待っててくださいね」
頷き、立ち上がるとリアラはキッチンへと向かう。その姿を見送って、ダンテはソファに近づき、彼女の座っていた隣りに腰を下ろす。しばらくして、リアラがカップの乗ったトレーを持ってやってきた。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとな」
「どういたしまして」
にっこりと笑うと、リアラはトレーを片付けようと踵を返す。だが、それは服の裾を引っ張られたことで阻まれた。リアラは後ろを振り返る。
「ダンテさん?」
「…悪い、今は隣りにいてくれないか?」
「…」
理由を尋ねることはせず、リアラは静かにダンテの隣りに座る。
お互いに黙したまま、カップに口をつける。カチ、コチと時計の針が時を刻む音だけが響く。
ふいに、ダンテが口を開いた。