days to spin−白い糸と赤い糸− | ナノ
-scar‐ 8  [ 8/66 ]


「雨、止みませんね。迎えに来て正解です」

「…そうだな」

「傘、役に立ちましたね。でも、ダンテさんの言う通り、もう少し大きいやつでもよかったかな…」

「大きいのだと濡れる心配はないが、お前が持つのが大変そうだったからな、それでよかったんじゃないか?」

「でも、こうやって迎えに来た時に困りますよ。二人で入ると小さいですし」

「俺は少しくらい濡れたって大丈夫だ、リアラが風邪を引かないならいい」

「だめですよ、それだとダンテさんが風邪を引いちゃいます!」


自分を心配するがゆえに怒るリアラに、ダンテは口元を綻ばせる。


「もう…。早く事務所に帰りましょう、ネロも待ってますよ」

「そうだな」


ダンテが頷くのを確認してから、リアラは閉じていた傘を開く。


「狭いと思いますけど、濡れないようにちゃんと…」


入ってくださいね、そう続くはずだった言葉は音にならなかった。−ダンテが、後ろから寄りかかるようにして自分を抱きしめてきたから。


「…ダンテさん?」

「……」


呼びかけるも、返事は返ってこない。代わりに身体を包む腕の力が強くなったのを感じて、リアラはそっと視線を移す。肩に乗せられた頭は伏せられていて、視界に広がるのは銀色の髪だけ。表情は窺えなかった。
リアラはそっと左手を伸ばす。


「…少ししたら帰りましょうね」

「…ああ」


宥めるように優しくゆっくりと自分の頭を撫でる手に、ダンテは目を閉じて頷いた。

  
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