あの頃 4

「……ん、」


目を開けると、見慣れた事務所の風景。
あたしはソファーに凭れるように座っていて、手元には開いたままの本がある。

…頭がボーッとすることから察するに、どうやら読書しながら眠ってしまったみたいだ。ちょっと身体が痛い。
本に栞を挟んで、立ち上がりながら伸びをする。


「おー、起きたのか」


後ろからの声に振り返れば、いつも通り机に足を乗せて雑誌を読んでいたであろうダンテが、顔だけこっちを向いていた。


「んー、…いつ寝ちゃったんだろ…」

「起こした方が良かったか?」

「いや、大丈夫…」


とりあえず、喉が渇いてるから何か飲みたい。
キッチンに向かいながらダンテの前を通りすぎ…ようとして、ふと足を止めた。

(…そういえば…)

何か思い出そうとしてダンテの顔をじっと見ていたら、向こうも視線に気付いて雑誌から顔を上げた。


「…何だ?そんなにガン見して、見惚れちまったか?」

「むしろ見飽きてるよ。そうじゃなくて、なんかさっきまで夢見てたんだけど…」

「ほー、どんな夢だ?」

「いや、内容は忘れちゃったんだけど…なんかダンテがいた気がする、ような…」


なんとなくだけど、紅と銀色が脳裏に少しだけ残っている。
…あと、オレンジ色?


「へぇ、そりゃ嬉しいな!夢に出てくるくらい俺のこと大好きなのかティナは」

「あー、はいはい。そうかもねー」


ダンテがウザくなってきたので、キッチンに向かうことにした。

…それにしても、妙に気になるなぁ。
寝てる時に見た夢が思い出せないことなんて、よくあるはずなのに。
何でだろう?






首を傾げながらキッチンに消えたティナには、ダンテが呟いた言葉は聞こえなかった。


「…本当に、なんであの時にあんな事、教えちまったんだろうな」



あの頃
(まだ、色々な事が始まる前の話)
***
土間様のサイトが10000hitしたということで企画をやっていたので、リクエストして頂いてきました。
土間様宅の夢主(ティナちゃん)とおじさんの出会いでリクエストしたのですが、ガッツリ書いてくださいました!
もうティナちゃん、いい子すぎて…!思わずうるっときました。おじさんの泣きそうな顔の意味もわかるので、ダブルパンチで泣きそうです(´;ω;`)
ぜひ、事務所に来るまでの話も書いてほしいです!その時は読みに行きます!
土間様、ありがとうございました!
10000hit、おめでとうございます!

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