狼とうさぎの1週間 48

この家では苺といったらストロベリーサンデーであるが、今日はショートケーキにしてみた。
そしてリアラの好物のミルクレープに、ディーヴァの好物のプリン。
他には夏らしくオレンジを使ったケーキや、さわやかなブルーが涼しげなソーダゼリー。
思いつく限りのお菓子を作り、2人…というよりディーヴァはスッキリとした表情だった。
リアラは完成したお菓子の量に若干ひいている。

「はぁー満足した!」

「ものすごい量になったけど、これ…全部食べるの?」

「まさか!苺とか使ったのばれちゃうけどダンテ達に残しておこうと思って」

「そっか、良かった…」

大量のお菓子をプレート皿に少しずつ並べた。
綺麗だが、ダンテ達なら「こんなちょっとずつじゃ満足しない」と文句を垂れそうである。
その話をしてカラカラと笑いあいながら、2人はディーヴァのとっておきの上質な茶葉で淹れたアイスティーを準備する。
そしてきちんとセッティングしたアフタヌーンティーセットを囲み、ここに小さなお茶会が始まった。

「ストロベリーサンデーもいいけど、たまにはショートケーキも美味しいね」

「うん。ミルクレープもすごく美味しいよ、ありがとう」

「リアラお姉ちゃんはミルクレープ好きだもんね。あと、このソーダゼリーもリアラお姉ちゃんの瞳の色を意識したんだよ」

「こんなに綺麗な色してるかな?」

「綺麗だよ〜ダンテさんとかもよく綺麗って言ってるでしょ?」

「ふふ、そうね。私ソーダ系の味も好きなの。ありがとう、美味しいよ」

互いに作ったお菓子の感想を言いながらお茶会は進む。
ここで話は半獣化した今回の出来事に移行した。

「いきなり獣の耳が生えるんだもん、びっくりしたよ」

「あの時私をかばわなければ、ディーヴァちゃんは半獣化をまぬがれたのにね」

「…そうかもしれないけど、咄嗟に体動いちゃうしやっぱり大切なお姉ちゃんだから」

「ありがとう」

リアラはこの話を聞いてまたじーん、と感動した。
ちゅー、とアイスティーをすすりながらディーヴァが続ける。

「耳が生えたことよりもからかわれたり悪戯されたり…そっちの方がやっかいだった気がするよ」

「うん、それは言えてる。ネロがいなかったらどうなってただろうね」

「その辺は考えたくないや。バニーガールの服とかどこから持って来たんだろうね。あんなの着せられて正直、殺意沸いたもん」

「さあ、どこからだろう。殺意までいかないけど、私もちょっと腹が立ったよ。あんなミニチャイナドレスとかよく持ってこれたものだわ!」

こっちでは笑みの中に殺意を含ませ、片やプリプリと怒りながら思いだした。
コスプレなんてもうこりごりである。

「あ、でもリアラお姉ちゃん似合ってたよ!狼耳もかわいかったし。あたしも触りたかったのにいっつもダンテさんが独り占めしちゃうんだから!」

「ディーヴァちゃんこそ。私も触りたかったけど、若が1人で撫でてるから全然触れなかったし。私のは魔獣化すれば同じ毛質が触れるからいいけど呪いが解けたらもううさぎの耳とはお別れなのよね…」

「男の人が獣耳すきな気持ち、なんとなくわかった気がする」

「そうだね。何となく、だけどね」

頷きあって会話は進む。
フォークも進む。

「あとあのフードつきTシャツはいい想い出になったわね」

「うん、リアラお姉ちゃん、ありがとう。これからも出かける時とか着ようかな」

「私こそありがとう。色違いのおそろいって本当の姉妹になった気分だわ♪…あ、そうそう。気がつかなかったけど眠る時も半獣化してるんですって。ディーヴァちゃんが徹夜してソファーで寝ちゃった時にそうなってたのよ?寝顔とうさぎの耳ですごくかわいかったわ。写真に撮っておけばよかったな…」

「それは勘弁してほしいかな。てれちゃうよー」

ちなみにダンテ達が2人の寝顔を写真におさめたことは全く知らない。
知ったらどうなることやら…
その後も2人は他愛のない話を沢山話した。
話は尽きることはなかったがそろそろ皿の上が空になろうとしている。
ディーヴァは最後に食べようと残しておいたショートケーキの苺をおもむろにつまみあげた。

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